太陽からの逃避行(仮)1
今、自分は凶悪な顔をしているだろうな、とジュンは心の中で自嘲する。現に、風呂を済ませて日和の部屋へ足を踏み入れた途端に、既にベッドに入って本を片手にくつろいでいた日和がギョッとしてジュンを見た。
「……ジュンくん? どうしたの、やけに長風呂だと思ったらすごい顔で出てきて……」
「……」
今夜、なんとしてでも成し遂げなければならないことがある。そのために、ジュンは生まれて初めての苦痛に耐えながら『支度』をしてきたのだ。ふぅ、と深く息を吐き出すと、日和の待つベッドに乗り上げ正座をして背筋を伸ばす。
「おひいさん、あの、…………っ」
「……?」
ジュンの震える声に気付いて、日和は本を置いて身を起こす。何かあったのだろうか。はくはく、と開閉するジュンの口から漏れるのは意味を成さない吐息だけ。必死に声を絞り出そうとしているジュンから言葉が発されるのをじっと待つ。
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