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    Rahen_0323

    @Rahen_0323

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    Rahen_0323

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    ヒスイ帰りカキツバタ最終話です!一旦終わりです!
    シリーズ物なので「置き去った男」の1〜6を先に読むことをオススメします。なんでも許せる方向け。
    散々言った通り続編を書く予定なので若干半端かもしれませんが許して。続編はカキツバタとオリジナルのモブがメインになる予定です。ともあれ一旦完結です!突発で始まったシリーズでしたがお付き合い頂きありがとうございました!また続編と別の話でお会いしましょう!

    置き去った男 7(終)イッシュとシンオウまで赴き、そしてカキツバタの目的が果たされてパルデアに帰って来た後。
    皆は直ぐにアレコレ気を遣ってくれたが、あの地で出会った皆さんの言葉を受け止め切れなかったのか、カキツバタは数日間酷く情緒不安定になってしまった。
    ある時はまるで自分を痛めつけるように不自由が少し残ったらしい手足を強く握り掻き毟り、ある時は急に泣き出してしまったかと思えば気絶するように眠り。一日中ボーッとして動けない日もあった。暴れたりとか、そういったことは無かったが。
    どうにかシャガさんが利用していた宿に留まってもらって様子を見続けたけれど、ポケモン達も心配している。もう一度医者に掛かった方がいいのでは。

    そう俺達が考えていたタイミングだった。

    カキツバタが自力で精神を安定させられるようになったのは。

    「なんか、ごめんな。迷惑……」
    「もういいってば。謝らないで」
    まだ苦しそうではあったが、数日で大分整理出来たらしい。ベッドの上で、纏わりつくフライゴンや翼で包んでくれるウォーグルを撫でながら申し訳なさそうに頭を下げてきた。
    ポケモン達も、流石に主人があんな有様になった以上衝突はしなくなっていて。むしろ『もう喧嘩しないから行かないで』と言いたげに泣いていた。
    「ウォーグル達も、ごめんな。もう大丈夫。大丈夫だから。ごめん」
    ……まだ大丈夫でないのは明らかだったものの、俺達は咎めなかった。今はその強がりを否定しない方がいいと思ったから。
    「カキツバタ、水を」
    「ああ……悪い」
    彼の声が掠れていた為、シャガさんが吸飲みを差し出す。素直に受け取ってくれて皆でホッとした。
    「お腹は空いてないですか。食欲は?」
    「…………まだ、ちょっと無いかも」
    「一口だけでも食った方がいいべ。何日ロクに食べてないと……」
    「…………むり」
    弱々しく震えた声に黙ってしまう。
    小言を言っても逆効果のようだ。気が進むのを待つしか無えかも。

    「…………生きて、幸せにねえ………」

    ふと零れた呟きに、俺達は顔を見合わせる。

    同時に、ずっと大人しく姿を見せなかったあの旧式ボール内の三匹が飛び出した。

    「あ」
    「わぎゃあ!?」
    「こ、この子達は……!!」

    彼らは総じて見たこと無い、いや、神話の中で登場する伝説のポケモンと同じ姿形をしてた。

    俺達が仰天するのにも構わず、巨体がベッドの傍にあった腕章と髪飾りをカキツバタの手元に置き、彼に擦り寄る。

    「うん、うん……そうだな。アイツらもきっと生きろって言うよな。……ごめんなあ」
    あ、そっか。この子達は確かショウさんかノボリさんかに預かったポケモンだって。
    三匹はある種の忘れ形見なのだろう。カキツバタはとても申し訳なさそうで、三匹もまた以前の主人の意思を伝えるかのように鳴いた。
    「カキツバタ」
    「ん」
    シャガさんが息を吸い込み、孫の手を握る。
    「生きてくれるかい。この先の未来を……きみの人生を」
    どんな理由でもいい。どれだけ泥臭くてもいい。ただ少しでも長く足掻いて欲しいのだと。
    伝えられたカキツバタは、ほんの僅かに光の灯った目で笑った。

    「うん…………生きるよ。幸せってえのは、よく分かんねえけど」

    引き留められる理由は少し分かった。

    照れ臭そうに微笑む細い身を、シャガさんが抱き締める。
    「……よかった。……もう私を置いて行かないでくれよ」
    「へへ、苦しいよじーちゃん」
    「返事は」
    「へーい」
    ポケモン達にまでぎゅうぎゅうくっつかれ、「おーい苦しいよー暑いよー」と笑う少年の様子に、漸く安心出来た。
    まだまだ完全に大丈夫とは断言しないけれど。この調子なら、カキツバタの性格なら、きっと。

    ……そのうち罪悪感も呪縛も忘れるほど幸せになってくれれば、それが一番嬉しいな。俺も、皆も、きっとあの人達も。

    内心願いつつ、落ち着いた頃を見計らって俺も皆と近づいた。
    「そうと決まれば話し合うことは山程ありますよ、カキツバタさん」
    「難しい話は我々大人で解決しますが、せめてザックリとした希望くらいは教えてください」
    「げーっ」
    「『げーっ』じゃない」
    「…………はーい」
    カキツバタは嫌そうにしながら、今後についてオモダカさん達と話し合う。先ず戸籍だとか死亡扱いは、「別人として振る舞うのはかったりぃなあ」とのことなので、年齢や何処に居たかの事情は隠してそのまま生きることになって。
    一族のこと、働く場所、そもそも何処でどう過ごしたいか。それらも話そうというところで、彼は言い出しづらそうに挙手した。
    「あー、それなんだけど。……オイラ、その、ちょっと、やりたいことっていうか、そういうの………」
    「えっ!!」
    「本当ですか!?」
    「なにをしたいんだい。なんでも言ってくれ」
    「食い付き過ぎだっての。……いや、うん、ほんとちっさいことだし、ダメならダメでいいんだけど」
    「余程のことでない限りダメだなんて言いませんですよ!教えてください!」
    口をもにょもにょと動かし葛藤するので、俺達は辛抱強く待った。
    なんだろう。小さいことって言うならめちゃくちゃ難しい話ではなさそうだが。コイツの欲求についてよく知らない上に最近は無欲も無欲だったので想像つかない。俺にも叶えられる内容だったらいいけど、

    「………………学校、行って、卒業したい…………」

    「「「………………………」」」
    身構えていれば、蚊の鳴くような声でその願望が紡がれた。
    俺達はポカンとする。学校?卒業したいって?
    カキツバタが…………
    「〜〜〜っ、や、やっぱいい!もう18にもなるし働くわ!忘れて、」
    「うぼぉいおいおいおい!!!!!!」
    「へえっ!?なに!?」
    途端、撤回しようとするカキツバタの声も無視してハッサクさんが号泣した。
    釣られたのかハルトとシャガさんも目元を抑える。俺も色々情緒が爆発しそうで蹲り顔を隠した。
    カキツバタは大いに困惑する。
    「な、なんで泣くの!?マズいこと言った!?」
    「うゔぅ、違いまずうゔゔぅぅ!!!!小生、かっ、感動、してえ!!!!!」
    「感動?」
    「そうですよね、卒業出来ないままでしたもんね……っ僕も、嬉し、ええーん…………!!」
    「嬉しい?」
    「もう取り消させないぞカキツバタ……今度こそ健全に学校へ通うといい。私達が可能な限りサポートしよう」
    「えっ、い、……いいの?」
    「いいに決まってんだろ!!!留年しないならな!!!」
    「そら勿論…………」
    「あ、言うたな」
    「留年してしまった場合どうなるんでしょうか、彼」
    「さあ?」
    見てみれば、カキツバタも徐々に表情を歪めていて。
    ウォーグルの翼に埋もれながら笑んだ。
    「う、うん、いいなら、行く。……ありがとう」
    珍しい素直なお礼に、ハルトとハッサクさんは更に大泣きしてしまった。
    「それで、どの学校に通いたい?」
    「どの……ってえと」
    「オレンジアカデミーはどうですか?生徒も職員も幅広い年齢層で、様々な授業も備わっているので馴染みやすく楽しめると思いますよ」
    「いやいややっぱりブルーベリー学園だべ。イッシュだしあそこ今ねーちゃんも居るし、掛け合えば復学出来るかもしれねえ」
    「二人共視野が狭いよ。学校なんてどの地方にもあるんだから、折角ならカントーとか行くのも……」
    「私としてはイッシュ本土に居てくれた方が安心なのだが」
    「小生達は歓迎しますですよ!!是非アカデミーに!!」
    「…………そんなに招きたいなら学費を出せばいいのに」
    「あっそれ名案やな!どやハッサクさん」
    「勿論お任せあれ!」
    「待ってくれハッサク殿、仮にも保護者は私だ。学費は私が出す」
    「なんでしたら、パルデアリーグのお手伝いを条件に学費免除も………」
    「なんの争奪戦ですか?」
    「俺もちょっとした援助くらいなら多分……」
    「スグリまで?」
    「ちょ、え、なんでなんでなんで???なんでオイラより乗り気なの???落ち着いて???」
    「もしもし、クラベルですか?」
    「ねーちゃん!相談さあんだけど!」
    「待って本当に待って」
    主に俺とオモダカさんが張り合ってスマホロトムまで取り出せば、アオキさんのムクホークとハルトのコライドンに鷲掴みされた。ただもう通話は繋がってしまってたので、二つの画面の向こうから『何事????』という不思議そうな音が飛ぶ。
    「実は、かくかくしかじかで」
    「カキツバタさんを是非オレンジアカデミーにと」
    「いやブルーベリー学園に」
    『卒業するつもりなのはなによりだしむしろあたしもいいと思うけどアンタ達はちょっと落ち着きなさい』
    『カキツバタさんのご希望は?どの学校に通いたいのでしょうか』
    「うーん気まずい。言いづらい」
    「ご安心ください。何処を選んでも誰も責めませんですよ」
    「トップとスグリさんが暴れようものなら自分とハルトさんがこのまま捻ります」
    「怖………」
    「上司と後輩への態度じゃねえ」
    「涼しい顔しながらなに言うてんねん」
    選択を迫られたカキツバタは口角を引き攣らせ、そのまま目を伏せて考え込む。安易に決めたりはしないらしい。七年前より思慮深くなったようで結構なことだ。
    学校がダメならちゃんと働く気だったっぽいし、なんだかんだコイツも色々成長してるよな。自己肯定感は一層低くなっちまったみてえだけど。シャガさんからしたら複雑かもしれない。
    ……大分長いこと思案した末に、少年は意を決したように開口した。
    「オレンジアカデミーがいいかな……学園はちょっと気まずいわ」
    「!! 我が校を選んでいただけて嬉しいです」
    「………まあカキツバタがそう言うなら」
    「決まりですね!」
    イッシュよりパルデアの方がいいのだろうか……とシャガさんと二人ムッとしたものの、オレンジアカデミーに通いたいという彼の気持ちを尊重した。
    『ま、嫌になったらいつでも言いなさい。シアノ校長もアンタなら歓迎してくれるわよ』
    「学園でなくともイッシュには他にも学校があるからね。無理はしないよう」
    『なにかあれば、校長にもハッサク先生にもお気軽にご相談を』
    「気が早えよ、まだ入学してねえじゃん」
    「でも入学式の日も過ぎてますし、今年度最初の宝探しも終わりが近いですよ?編入するなら急がないと!」
    「ていうか一年生からでいいんだべか?二年生の方がいい?」
    「んー、なにもかもブランクとかあるだろうしアカデミーのことはよく知らねえし、一年でいいけど」
    ワーワーとテンション高めに相談する俺らに本人は引き気味で。
    「制服の採寸もしなければ」
    「校長、部屋って空いてます?」
    「そもそも試験も必要なんじゃ?」
    「クラベル、試験に関しては時事問題はなるべく避けなさい」
    「不公平と捉えられるかもしれませんが、七年も空白がありますからね……小生からもお願いしますですよ」
    「チリちゃんらもなんかやれることあります?」
    「一先ずペパーさんには一報を入れましたが」
    バタバタ準備をして、その前に死亡届けの方も、家は、荷物は、部屋はとどんどん騒がしくなって。
    引いていたカキツバタは、最後にはまた笑っていた。
    「騒々しいヤツらだねぃ?なあウォーグル」
    ポケモン達も楽しそうに鳴き声を上げる。

    七年前で止まっていた一人の少年の時間が、動き出そうとしていた。














    「ネクタイやだ〜〜〜動きづれえよお〜〜〜」
    「つべこべ言うな!ほらちゃんと結ぶ!」
    「ていうか本当にマントとジャージも着て行くんですか?浮いちゃいません?そもそも暑くない?」
    「暑いけど、まあオイラのトレードマークだし?無いと落ち着かねえんだわ。どうせ傷跡隠す為に長袖なんだから変わんねえ変わんねえ」
    「傷跡くらい誰も気にしないと思いますが。トレーナーである以上よくあることでは?」
    「そーゆーのは仲良くなってから〜。オイラ目付きも悪いし最初から晒しちゃマズいだろぃ」
    「まあ確かに」
    「自分で言ったからいいけどちょっとは否定しろ〜〜〜」
    変わらないへらへらとした張り付けた笑顔で、しかし緊張と期待も混じった様子の彼に、俺達はドラゴンエールを送ることにする。
    「ちゃんと飯食って、ちゃんと寝ろよ」
    「授業もサボらない!居眠りしない!」
    「お友達とも仲良く、ですよ」
    「へーい。まあ任せろぃ。ツバっさんやれば出来る子だから」
    「…………なんかあったら誰にでもいいから相談しろよ。怪我とか病気にも気を付けろ。俺達、応援してっから。程々にけっぱれ」
    「もう嫌われ役になろうとしないでくださいよ?ハッサク先生もペパーも居るんですから。先生達をちゃんと頼ってね」
    「その通り!……これからカキツバタくんは、イチからやり直すんです。小生達だけでなく、先輩達も沢山頼りにしなさい。好きなように、楽しく、幸せに生活する為にも!いいですね?」
    「…………ん。そうだねぃ。まあ努力はするわ。じーちゃんにも口煩く言われたし」
    言い付けるうちに準備は終わって、カキツバタは俺から手持ちのボールと新しいスマホロトムを受け取って。

    あの髪飾りをネクタイに、腕章を右腕に着けた。

    「いいね!イカしてるよツバっさん!」
    「そらどーもー」
    壊したり失くしたりしないか、違う物に加工しようかと皆で散々心配したけど、この二つはこのままにしておきたいらしい。彼は遠い遠い過去で出会った仲間の存在を背負いながら、鞄を手に取った。

    「そんじゃ、行ってくるわ!」

    未だ多くの謎と絶望を抱えている少年は、それでも未来へと進もうと俺達に片手を上げた。

    俺とハルトは、前進しようとする嘗ての先輩の背を押すべく手を振る。

    「「行ってらっしゃーい!」」

    俺達が味わった喪失が過ぎ去り、淡い希望がやってきた。

    今日カキツバタはオレンジアカデミーへと編入する。

    俺達もまた、当たり前の時間を進み出した。










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