孕ませないと出られない部屋遠征の帰り、いつも通りに本丸に戻ったはずが、桑名は気付けば松井と二人、見知らぬ部屋にいた。
やけに広い寝室のような部屋の奥にキングサイズのベッドが鎮座していて、あとはソファとローテーブル、冷蔵庫、ウォーターサーバ、バーカウンター。
玄関のドアノブをガチャガチャやってみたけれど、もちろん開きはしない。玄関脇のあと二つあるドアを開けてみると、トイレと、これまた無駄に広いバスルームだった。
「らぶほてるみたいな部屋だね…」
まだ事態を飲み込めていない声で松井が呟く。
確かに、2000年代の遠征中に思わぬ空き時間ができた際、松井と二人で共犯者めいてくすくす笑いながら部隊の目を盗んで忍び込んだその施設に、この部屋は酷似していた。
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