転移は非常に高度な魔法だ。複雑な術式は勿論、鍛錬を積んだ術者であっても身に宿る魔力をほぼ使い果たす程のエネルギーが必要となる。
「はあ……レガシーなアルゴリズム。コスパ悪すぎ」
消耗し、膝を着いた魔法使いが地面を見ながら零す。どちらかと言うとこどものように否定を繰り返し、泣き喚く男を宥めすかす方に憔悴を覚えた気はするが、その彼も今は、全魔力を込めて遠い地に無理矢理送ってしまった。余りにもノイジーで、PDCAも碌に回せない、とても優しい奴だから。
いつ頭から倒れてもおかしくない程の眩暈に見舞われ、立ち上がるのもままならず。魔法使いは自身こそ計画性が無くなったものだと、自虐的に喉奥を鳴らす。
耳鳴りの合間に聞こえる獣共の低い唸り声。何処か遠い出来事のように思いながら、青年は満足気に口許を歪めた。