「ボークはスピリチュアルなものは信じないリアリストだけど……流石に、厄祓い行こうかと思ったよ……」
彼にしては珍しく、随分と参った顔付きをしているので、冗談ではないだろう。
「Red Hillに効能が高い縁切り稲荷があるらしいぞ……です」
「把握。良縁を結んで悪縁を切る、ね……。そこまでの話題性はまだ獲得してなさそうだし、ブログのネタにもなりそう」
携帯端末で直ぐに調べ上げたクースカの目が輝く。ライバルのブロガー達が取り上げていない、取り上げていても検索上位を取れずにインプレッションを稼げていない事まで目敏く見ている。違うそうではないとリカオは訂正したかったが、彼はもう数字に釘付けだった。
「明日、早速キャッチアップだ。情報は鮮度がマスト。ありがとう、なかなか良い記事のドラフトが浮かんだ」
「ブログのネタの方が本懐になっていないか……です」
「ん、ウェイト。夜は提灯が灯るってレビューに書かれてる……こちらの方がロケーション良さそうだ。ASAPで行くとしよう」
「今から行くつもりか……です。コラ、お前っ、怪我をしたんじゃないのか……です!」
慌てて追及するも遅く、好奇心とフットワークの軽さを活かしたノマドワーカーのブロガーは席を立って歩みを進めていた。小脇に抱えるいつもの端末がない分、余計にテンポが早い。
「地下鉄ならすぐだね。行ってくるよ」
「行ってらっしゃいませ。どうぞお気を付けて」
「待て、俺も行く……です!」
彼の食い付く情報を与えた負い目と、身の上などまるで考えないアグレッシブさに対する危機感に、リカオが狼狽えながらも急ぎ後に続く。
「オレィも行っといた方が良かったかなー?」
「ジャロップさんはご縁を切りたいと思う事はあまりないのではないですか」
「確かに!」
何なら悪い縁など今の所ないかもしれない、と本気で考えているのがジャロップで、赤い糸は何本繋がっていようとも大丈夫という罪作りな男である。