連れ去らないで私の……を、 「ごめんね、私レポートがあるんだ」
そういってベテルギウス周辺星人――ベテルギウスからおおよそ三十光年は離れているそうなので、便宜上周辺星人と名乗っている彼女――は私たちの前から足早と駆けて行った。帰る方向は全く一緒なので、必然的にその駆けて行った方向を見るのは自分の帰り道を見ているようだ。自転車やその他のテクノロジーに関して一切合切知識が無いのではないのだろうか、と想うほどに彼女はそういう物に疎(うと)く、今日も結局歩いて帰るらしい。駆けて行ったのだからといっても、そのスピードも持久力も大したことなくて、ヒイヒイいう姿が容易に思い起こさせる。容姿が地球人と何一つ変わったところが見られない点も併せて。
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