シャーナイを吹く人 తండ్రి కోరిక「……どうしよう」
幼い少年、シヴドゥは辺りを見回した。
祭りの市場は多くの人が行き来し、一緒に来たはずの母、サンガの姿が見当たらない。はぐれたのだ。楽師たちがムリダンガムを叩きシャーナイを吹くのが気になって、それを見に行ったところまでは覚えている。それから……わからない。
「……どうしよう」
おかあさん、と漏れた声がのど元まで出かかった嗚咽に震える。
泣くものか、と目をこする。
強い風が吹いた。
「どうしたのだ?」
低く穏やかな、森に佇む大樹のような声がした。顔を上げると、獅子のたてがみのような長髪をふわりとなびかせた長身の男がそこにいた。
「……おかあさんが…っ…いなくなった」
男に問われるまま、シヴドゥは答えた。改めて口に出す事実に耐え切れなくなり、嗚咽とともに堪えていた涙が溢れていく。
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