拷問係 携帯電話の着信画面が、薄暗い寝室をぼんやりと照らした。規則的なバイブレーションが木製のベッドサイドテーブルの上で振動する。ベッドに横たわる痩せた男は、背後で鳴っている電話を振り返って取ろうとはしなかった。左手をブランケットから静かに引き抜くと、隣で寝息を立てている男の藤色の髪をすく。しばらくそうしているうちに着信は止み、画面も暗転した。あたりは再び暗闇に包まれたが、間も無く二度目の着信音が鳴り響く。髪を撫でられていた方の男が薄く目を開いた。
「出ぇへんの?」
緑青の髪の男は質問には答えずに、指先を相手の襟足に差し入れた。着信の振動で移動した携帯電話がプラスチック製のベッドサイドランプにぶつかり、カタカタと音を立てる。
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