時々子供になっちゃう兄様と一緒に暮らすことになった話2 尾形百之助は死ぬことにした。
別に悲壮感はない。一粒の涙を流すこともないし、淡々としたものだ。これまでの人生それなりに泥臭く生き抜いてきたのに、こんなに唐突に人生を終えようとしていることは自分としても予想外だった。だが父の死の知らせを受けて以来、何もかもがどうでも良くなってしまったのだ。
百之助の父は大企業の社長、母はその愛人だ。だが父は本妻との間に子供が産まれるとぱったりと来なくなり、そのうちに母は亡くなった。
自分たちを捨てた父を百之助は恨んでいたが、今になって思えばその気持ちをバネにして励んでいたのだろう。
だから、父の死で全てが台無しになった。なにもかもどうでもよくなって、遺産相続権も気持ちよく投げ出してやった。そうしてこれといった未練もなく、百之助はアパートの屋上から飛び降りた…はずだったのだが。
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