青 夜明け前にひとり海を見に行った。
近しい人を亡くし傷ついた心をどこかの誰かが憐れんでくれたらしい。まだ薄暗い空を爆雷が明るくすることもなく、銃声が遠くから聞こえることもなかった。
走って。
走って走って。
そしてたどり着いた海を、さほど感慨もなく眺めた。
ああ、こんなものか。
ぜんぜん綺麗なんかじゃない。
乾いたため息をこぼす。
黒々とした波が砂浜を舐めるように寄せては返す。
ふと、波のあいだに人影が見えた。
よく知っている顔だ。
ついこの前死んでしまった彼らが、こちらに向かって手をふっている。
こっちに来いよ、と手招きしているように。
ふらふらと、引き寄せられるように波へ足を踏み入れる。
夜の空気に冷えた海水は思っていたよりも冷たい。見る間に体温を奪っていく。
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