いらない心配より君のとなりが欲しい 扉を開く。
隙間から顔を出して右を見る。左を見る。
よし――誰もいない。
無人を確認し、グランは一歩通路へ足を踏み出したその時――
「――よォ、グランサン?」
「……っ!?」
突然エルモートから声をかけられ、持っていた剣を落としてしまった。
金属の鞘が床を叩き、薄暗闇に静まりかえった通路に響き渡った。
グランは慌てて剣を拾いあげ、周囲を見まわす。
よかった。強引に団員の眠気を覚ますまでには至らなかったようだ。ほっと胸を撫で下ろすのもつかの間、横から容赦ない指摘が突き刺さる。
「夜中に部屋を抜け出そうとして、訓練かァ?」
「ち、違うよぉ?」
うわずった声が、咄嗟に出た言葉の信憑性を薄めていく。
エルモートの眼差しが鋭くなり、グランは通路に出していた足を引っこめた。
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