それから?「ねえ、勇利、大丈夫?」
そうピチットくんに声をかけられた僕は声のほうに振り向いた。
「え?なにが?」
「なにが、じゃないよ!目の下に酷いクマ作ってるじゃない!きのう何かあったの?」
「え、そんなに酷い?」
「昨日は普通に滑ってたのになんだかフラフラしてるし、今日は休んだほうがいいんじゃないの?」
「えーっと、全然元気だし大丈夫だよ!心配してくれてありがとう、ピチットくん!」
そう言ってピチットくんに笑って見せたら、背後から黒い影が現れた。
「カツキ、今日はもうホテルに戻って休め。練習しても怪我をするだけだ」
ヤコフコーチだった。
「え、でもまだ大して滑ってないですし」
「とにかくリンクの上はダメだ。体を動かしたいならリンクの周りでもジョギングしてから帰ればいい」
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