俺の平凡な人生にあの人は突然現れた。
いや元々居たが正しいか、今までは俺の視界に写る風景の一部にすぎなかった。職場の上司のおっさん、ただそれだけだった。
だがある日から嫌でも俺の視界に入ってくるようになった。
遠ざけておきたい、あぁはなりたくないと思っても気づいたら目で追っていて、ほっとけなくて、助けてしまう。
そしてあの人は伝説になった。あの常識のないぶっ飛んだおっさんが伝説を作った。歴史上の英雄っていうのはかくしてこういう変人なのかもなんて思った。
正直あの人が眠っていた八年間は黒沢組なんて不名誉な枠組みもなくなり、仕事にも専念できたし結婚もできた。普通の幸せな人生を謳歌していた。
でもどこか空虚だった。あんな思いは懲り懲りだと思いつつどこかであの人の熱を、オーラを求めてたのかもしれない。あの刺激を味わって俺もちょっと当てられたのかもしれない。
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