あまやかし③【幕間】
いつにもまして、亡霊の嘆きが酷い日だった。
故に、ほとんど這いつくばりながら報告書を作成していたシンを具合が悪いのに何やってんだこの馬鹿と怒鳴りつけてくる腐れ縁が鬱陶しくて。
だから、おれ以外に一体誰が出来るのだと口うるさい顔面に紙の束を叩きつけてやった。
ろくに初等教育も受けぬうちに収容所へと押し込められたシンたちの世代は読み書きを苦手とする者が多い。シンは例外だ。……あの教会の蔵書と神父さまからの教えを独占していたのがシンだから。
ならばシンがやるのが道理だ。
この腐れ縁とて読書や文字を書いているところなど見たことがない。どうせ書類は突き返される。口を挟むないるだけ邪魔だ――くらいは言ってやろうと思っていた。
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