出会いまだ萬軍破が西幽の国境の防人の要として、西部総督を任されている時だった。
「閣下、魔剣の所持にて詮議いただきたい人物がございます」
総督府の砦の執務室で萬軍破が書類に目を通している最中に、取次の文官が急を知らせた。
文官が事の起こりを説明するには、先日の春の嵐で土砂崩れが起きて野外訓練中の部隊の上に大岩が転げ落ちて来た。
そこに走り寄った男が一撃で大岩を砕き、隊員達の命を救った。
そのあまりの威力に、あの男が所持しているのは木剣に見せかけた魔剣ではないか、と疑いがかけられたのだ。
西幽では魔剣は厳しく管理されている。
しかしごく稀に魔族や魔法道具作りに長けた工人が、作った魔剣を密かに巷に流すことがある。
風来坊の旅の男が魔剣を所持するとは、この地の治安維持を兼務する将軍として放っておけない。
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