有り得ざる時に乾杯を!それは何となく、何の根拠もなく、何の確証もなかったが──
「何かが起こる」と予感した夜の出来事だった。
今日も1日が終わり、ベッドに入り眠りについた。
だからこれは夢だと思った、何もない暗い空間に僕はいつもの服を着て立っていた。
呼吸もできるし歩くことも出来る、明晰夢という奴なのだろうと僕は歩き出した。
何もない空間を暫く歩くと一枚の扉があった、何かに招かれるように僕は躊躇いもなくその扉を開ける。
「驚いた、ただの人間が俺の腹の中に来るとは」
扉の先には灰色のダッフルコートを着た黒髪の青年が少し驚いた赤色の瞳を僕にむけていた。
中の空間は小さな図書館のようになっていてぐるりと周りは本で埋め尽くされている、僕は咄嗟に返事も出来ずにぽかんとしてしまった。
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