檻(その2)(導入だけ)②ヤッちゃう?
「ここ…は」
檻の中、薄い敷物の上で目覚めるなんて最悪だ。なにか薬品を嗅がされたのか、まだ少しクラっとする。
思考も纏まらず、まだぼーっとしているが、人間に囚われてしまったという事実だけは分かる。大失態だ。
見回せばまだ緑が多く、いつも暮らしている森の中だ。人間は近くに居なさそう……?
と思えば、ザッザッと土を踏む音が近づいてくる。人間だ。とりあえず、まだ寝ている振りをしておこう。
キィと扉が開き、トスッと隣に何か置かれる。そのまままたキィ、ガチャン、の音。そして遠ざかる足音。完全に聞こえなくなったのを確認して、ゆっくり身を起こす。
隣に寝ていたのは知り合いのキツネだった。
「燐音、起きてください。燐音」
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