さようならは似合わない「こはくん、次はいつ会えるのですか」
空は橙色に染まり、烏が大声で日暮れを告げている。朱桜家の中庭にそびえ立つ大きな木の下で、司は頭上の枝に腰掛ける彼を見上げていた。
「お別れんときはいつもそれやな、坊」
「だ、だって…!最近会える頻度が減っているでしょう?」
「それはわしの都合やなくてぬしはんの方やろ。お勉強にお稽古にで大忙しやんけ」
「…はい、次期当主として学ばなくてはならないことばかりで……でも、僕はまだ子供です。お友達とこうして遊んでいたい」
「そのお友達が桜河の人間やと知ったら、ご両親はどないな顔するやろなぁ」
「こはくんはこはくんです!お友達に家柄は関係ありません」
「……やとええけどなぁ」
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