色あせた名前 誕生日が命日になった。
苛々した気持ちのままウィリアムは数日を過ごした。ストレスの原因は、酷い死に方をしたことよりもその後の手続きにあった。まずは、名前。何よりも、名前。ウィリアムの前に出された「通知書」に記載されていたのは、ウィリアムではなく養子の三男だったのだ。おそらく同時に死んだであろう他の面々はとっくにあの世へ行ったのに、ウィリアムだけが「本人の名乗りとこちらにきている情報が一致しない」と言われ手続きが保留になっている。
とにかく、待つしかないようだ。仕方なく、市中をぶらぶらとすることにした。
僕をこんな目に合わせた奴らは?
つい気になって諸悪の根源を探し出すと、彼らは後見人の屋敷の庭で仲良く談笑していた。
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