風の隣で少しだけ乱暴に吹いた風。
和毛の少女はふわりと舞い。
流れるまま、辺りを見渡した。
いつも隣にいるはずの、たいせつな人。
今日に限って、姿が見えないのはどうしてだろう。
途端に、胸がぎゅっと苦しくなった。
ごうごうと耳が鳴り、何も聞こえなくなった。
背筋が冷え、視界は闇に閉ざされた。
気がつけば、風の吹くまま空を漂っていたはずの身体は地面に落ちていて。
風のない世界に1人、取り残されていた。
(こわい……こわいよ、ナトロ)
和毛の少女は、己が身を掻き抱き震えていた。
───
……意識が浮上する。
早鐘を打つ心臓に、呼吸を乱される。どうすることもできないまま、少女は布団の中で身体を丸めていた。
窓の外はまだ薄暗い。
少しばかり散らかっている魔法使いの寝室に、少女はいた。
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