KukiA_Nov
MOURNINGBASARA織田家に狂っていた頃のお市夢。研ぎ師夢主。外伝ストーリー沿いのnot恋愛、死ネタです。舞え、蝕の火 嫌な予感はしていた。
北方の一揆鎮圧に向け、遠征に出た部隊からの連絡が途切れたこと。
蘭丸さまからも濃姫さまからも音沙汰がないこと。
街道沿いに拡がる、出会ったものを斬り殺す女の噂。
――その女の姿が、聞く限りでは市姫さまそっくりであったこと。
本能寺、寺中。
私は御堂のひとつを背に立っていた。久しぶりに刀を握った手が汗でぬるぬるとする。
松明と月の光のおかげで、辺りは明るい。先ほどまで聞こえていた味方の呼び合う声もなく、しんとした庭。
耳に届いたのは、敵襲というにはあまりにも頼りない足音だった。
赤々と燃える松明の炎の向こうに現れた、見知った彼女。
「市姫さま……」
「……ひさしぶり、ね」
ゆらり、柳の枝のように揺れて一歩を踏み出す彼女の右手には、いつか私が研いで差し上げた薙刀が握られている。
3217北方の一揆鎮圧に向け、遠征に出た部隊からの連絡が途切れたこと。
蘭丸さまからも濃姫さまからも音沙汰がないこと。
街道沿いに拡がる、出会ったものを斬り殺す女の噂。
――その女の姿が、聞く限りでは市姫さまそっくりであったこと。
本能寺、寺中。
私は御堂のひとつを背に立っていた。久しぶりに刀を握った手が汗でぬるぬるとする。
松明と月の光のおかげで、辺りは明るい。先ほどまで聞こえていた味方の呼び合う声もなく、しんとした庭。
耳に届いたのは、敵襲というにはあまりにも頼りない足音だった。
赤々と燃える松明の炎の向こうに現れた、見知った彼女。
「市姫さま……」
「……ひさしぶり、ね」
ゆらり、柳の枝のように揺れて一歩を踏み出す彼女の右手には、いつか私が研いで差し上げた薙刀が握られている。