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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ20街が病んでいることなど誰が見ても明白だろう。ふらりと足を運んだ異邦人でも一目で分かるほど街の荒廃は一目瞭然だ。整然と並んだ石畳に染み込んだ血の色は消えず、壁に張り付いた肉片はは乾いている。何よりこの臭いだ。腐った肉の臭いや濡れた獣の毛皮の匂いが付き纏い、眉間が疼くようだった。住み慣れている筈の街だが、徐々に増す生臭い死臭に不快感は増すばかりだ。
粘つく唾液を吐きながら一匹の犬が飛びかかる。シモンの頸動脈を狙ったのだろう。身を屈めて襲撃を避ければ着地に失敗して犬が転ぶ。その四肢は腐って肉が崩れて始めていた。皮がずる剥けて繊維状の筋肉が剥き出しになった足から酷い匂いが漂っているようだ。
甲高く吠えたてる腐った肉を纏う犬の脇腹を蹴って弓で射る。誰かの飼い犬だったのかも分からぬほど原型を留めぬ其れを射殺せば、その隙にこちらに掴みかかろうと迫る男がいた。一切躊躇わずに首を刃で跳ねれば饐えた血の匂いがした。
10243粘つく唾液を吐きながら一匹の犬が飛びかかる。シモンの頸動脈を狙ったのだろう。身を屈めて襲撃を避ければ着地に失敗して犬が転ぶ。その四肢は腐って肉が崩れて始めていた。皮がずる剥けて繊維状の筋肉が剥き出しになった足から酷い匂いが漂っているようだ。
甲高く吠えたてる腐った肉を纏う犬の脇腹を蹴って弓で射る。誰かの飼い犬だったのかも分からぬほど原型を留めぬ其れを射殺せば、その隙にこちらに掴みかかろうと迫る男がいた。一切躊躇わずに首を刃で跳ねれば饐えた血の匂いがした。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ16鼓膜を揺らす声があった。
母を求め泣き叫び続ける赤子の声だ。止め処なくその鳴き声は延々と響き続け、息を吸って一息を置くような音までもがルドウイークの耳に届いていた。
鳴き声が果たしてがどこから響くのかを調べようにも、甲高い鳴き声は水の中で反響するかのように出所が掴むことができなかった。
その鳴き声は昼も夜も関係なしに響き続けた。時に頭の芯を揺らすように。脳の表面を逆撫でるように不快に響くその泣き声に耐えきれず、耳を塞いでは髪を掻き毟る。そんな日々が幾夜も続き、泣き声を掻き消す為だけに獣の断末魔を求めた。
狩りの中に身を置く瞬間だけ暫しの沈黙と癒しが訪れた。
そしてふと、輝く白刃を獣の血で染め抜いたある夜に気がついてしまったのだ。
7366母を求め泣き叫び続ける赤子の声だ。止め処なくその鳴き声は延々と響き続け、息を吸って一息を置くような音までもがルドウイークの耳に届いていた。
鳴き声が果たしてがどこから響くのかを調べようにも、甲高い鳴き声は水の中で反響するかのように出所が掴むことができなかった。
その鳴き声は昼も夜も関係なしに響き続けた。時に頭の芯を揺らすように。脳の表面を逆撫でるように不快に響くその泣き声に耐えきれず、耳を塞いでは髪を掻き毟る。そんな日々が幾夜も続き、泣き声を掻き消す為だけに獣の断末魔を求めた。
狩りの中に身を置く瞬間だけ暫しの沈黙と癒しが訪れた。
そしてふと、輝く白刃を獣の血で染め抜いたある夜に気がついてしまったのだ。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ15灰のように細かい雪が肩に薄く積もる。
それを払う剥き出しの指は血が凍るほど冷たく、骨の髄まで悴んでいた。身体中に浴びた血は冷えた肌には火傷をするほどの灼熱に感じたが、今となってはその熱と共に狩りの興奮と共に冷え込み、ただ煩わしい鉄錆くささだけを残していた。擦り切れた服の袖口で顔に浴びた血を拭えばシモンは疲れ切ったため息を漏らした。横目で見るのは石畳の上に倒れた、狼よりさらにひとまわり大きい黒毛並みの生えそろった獣だ。
黒い毛並みに半ば隠れた首から下げた狩人証だけが彼が教会に所属していた狩人であることを物語っている。今宵もまた、一人の狩人が獣に堕ちた。
瞳孔が歪に蕩け興奮に開ききっている。その瞳に宿るのは狩られることへの恐怖なのか、失いつつある自我か。引き攣った呼気の間に覗き見える歯はガタガタに崩れ、舌の色は燻んで紫色に染まっている。何より病の進行が窺えるのは膝下まで伸びた枯れ枝のような長い腕と、全身に生えそろった硬い毛だ。獣の病の兆候はとうに過ぎている。
7906それを払う剥き出しの指は血が凍るほど冷たく、骨の髄まで悴んでいた。身体中に浴びた血は冷えた肌には火傷をするほどの灼熱に感じたが、今となってはその熱と共に狩りの興奮と共に冷え込み、ただ煩わしい鉄錆くささだけを残していた。擦り切れた服の袖口で顔に浴びた血を拭えばシモンは疲れ切ったため息を漏らした。横目で見るのは石畳の上に倒れた、狼よりさらにひとまわり大きい黒毛並みの生えそろった獣だ。
黒い毛並みに半ば隠れた首から下げた狩人証だけが彼が教会に所属していた狩人であることを物語っている。今宵もまた、一人の狩人が獣に堕ちた。
瞳孔が歪に蕩け興奮に開ききっている。その瞳に宿るのは狩られることへの恐怖なのか、失いつつある自我か。引き攣った呼気の間に覗き見える歯はガタガタに崩れ、舌の色は燻んで紫色に染まっている。何より病の進行が窺えるのは膝下まで伸びた枯れ枝のような長い腕と、全身に生えそろった硬い毛だ。獣の病の兆候はとうに過ぎている。
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DOODLEpixivにアップしてたの引っ込めたのでこちらに過去ログ10ここは地獄だ。そう独り言ちたのは帰る家を何年も前に無くしたような襤褸を纏った一人の男だ。目元は古びた包帯に巻かれ塞がれているが、不思議と視界に問題はなく岩場をゆっくりと降っていく。降る途中、目についたのは青白い肌をした巨人だ。その巨体に釣り合いの取れた大砲のような銃を構えている。
こちらに気がついていないのを幸いに、シモンは静かに弓を引いて狙いを定めた。毛髪のない巨人の頭だ。狙いを定める時間は短いにも関わらず、矢の切先は巨人の頭部を貫き脳漿をぶちまけた。巨人の命を刈り取ったのを見届ければ、またゴツゴツとした足場の悪い岩場を降る。
鼻につく血腥さはべっとりと張り付き、吐き気を誘った。
シモンは口と鼻を覆うように襟を立て、袖口で顔の半分を抑える。血の川が流れるのは一際目立つ、壮大な教会だった。地面を埋めつく夥しい量の血は教会から流れている。本来であれば救い手になる為の聖域だ。そこから穢らわしい血が溢れかえっているのだ。その悍ましさに身の毛がよだつのを堪え、慎重にその足を進めていった。べちゃりべちゃりと靴底を鳴らすのは血だけではない。砕けた肉片までもがへばり付いているのだ。
3362こちらに気がついていないのを幸いに、シモンは静かに弓を引いて狙いを定めた。毛髪のない巨人の頭だ。狙いを定める時間は短いにも関わらず、矢の切先は巨人の頭部を貫き脳漿をぶちまけた。巨人の命を刈り取ったのを見届ければ、またゴツゴツとした足場の悪い岩場を降る。
鼻につく血腥さはべっとりと張り付き、吐き気を誘った。
シモンは口と鼻を覆うように襟を立て、袖口で顔の半分を抑える。血の川が流れるのは一際目立つ、壮大な教会だった。地面を埋めつく夥しい量の血は教会から流れている。本来であれば救い手になる為の聖域だ。そこから穢らわしい血が溢れかえっているのだ。その悍ましさに身の毛がよだつのを堪え、慎重にその足を進めていった。べちゃりべちゃりと靴底を鳴らすのは血だけではない。砕けた肉片までもがへばり付いているのだ。