普段より狭い視界に見慣れた天井が映る。手を翳して焦点を合わせながら、べらぼうに強い己の相棒はこの不自由な視界であれほどの強さなのかと妙に感心した。
部屋の外からぺたぺたと近づいてくる音がある。いつもは足音のひとつも立てないくせに、わざと音を立てて近づいて来ているのだ。今、自分は怒っているのだとこちらに知らしめるように。
そのうち足音の主はこの部屋に入ってくるだろうが、顔を合わせたところでどうせ長い長い説教が待っている。心底面倒だ。
横たわった布団の中で一通り思考を巡らせた水木は、無駄な抵抗と分かっていながらも外界を遮断するように掛け布団を深く被り直した。
鳴り続いていた足音が部屋の前でぴたりと止まる。息を潜め、相手がどう出るかを窺っていると襖越しに小さく声をかけてきた。
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