唯一に最愛を 日曜の夕方、昼の営業を終えた店内にはいつもの賑わいも忙しなさもない。
L字カウンターの真ん中、入口から入ってすぐのこの席は宮侑の特等席だ。
この席からはカウンターの中がよく見える。丹精込めて米を握る手元まで。
注文したおにぎりが出来るまでの間、貸切で────治には「夜営業の準備せなならんからお前の為の時間とちゃうねんぞ」と言われるが────それを眺める時間が好きだ。
時折ふわりと立つ湯気が鼻腔を擽るのが堪らない、視界に映るのは厨房に立つ片割れのみ。
……の、筈だった。
「……おい、なんやこれ」
「ん?」
侑が発する声は不機嫌そのもの。明らかに不服を表す声も産まれたその瞬間から彼の傍に居る治にとっては日常茶飯事で、侑には目もくれずせっせと手を動かしている。
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