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    忍殺TRPGソロアドベンチャーのリプレイです。書いてて実際楽しい!

    ニンジャスレイヤーTRPG2版ソロアドベンチャーリプレイ【カラテカルト教団の恐怖】ニンジャスレイヤーTRPG2版ソロアドベンチャーリプレイ【カラテカルト教団の恐怖】

     キタノ・ディストリクトの空は、今日も黒雲に覆われている。ネオサイタマの風物詩、降りしきる重金属酸性雨をフードでやり過ごしながら、男は地下商店街へ足を踏み入れた。黒のフード付きレインコート、黒のレザーパンツといった出で立ちである。その目は虚ろであった。
     フードの男はスタスタと歩き、突き当りの店にたどり着いた。シャッターは閉まっており、「アカチャン」「そでん」などと書かれた錆びついた看板がかつての栄華を思わせる。フードの男はシャッターをドンドンと叩いた。その音に反応して出てきた別の男が一人。中から出てきたのは、タキと呼ばれるハッカーだ。年齢はハイティーン。腕はそこそこ確かであった。タキの外見はその辺を歩いている貧しい高校生のそれと大して変わらず、着古したダメージジーンズに、底の擦り切れたバスケットシューズを履き、払い下げのアーミー系リペア・テックコートを着ている。ぼさぼさのブロンド髪の奥にある青い目は寝不足のクマに覆われ、疑り深そうだ。
     「ドーモ、ナイトネス=サン。また来たのか……」「ドーモ、タキ=サン。そう、まただ」
     ライトネスと呼ばれたその男は、びしょ濡れのフードを脱いだ。読者のみなさまの中にニンジャ洞察力をお持ちの方はおられるだろうか?もしそうなら、男のコートの中に光るスリケンに気づかれたことであろう。そう、彼はニンジャであった!
     タキは頭をかきながら、気だるそうにライトネスを迎え入れる。中は店舗スペースを無理やり改造した住居兼ハッカーアジトになっていて、中古のUNIXデッキがいくつも並び、張り巡らされたLANケーブルやジャンクパーツのたぐいで足の踏み場もない。ライトネスは薄汚いソファーの上にどかっと座り、煙草に火をつけた。
     「オイ、室内で吸うなよ」「そんな法があるか?」「俺の家だ、俺が法だ」「ハイヨー」ライトネスは渋々タバコの火を消す。ライトネスは元々マッポであったが、今ではこのように法を危険喫煙の言い訳に使う有り様である。ニンジャソウルは、こうも人を変えてしまうのだろうか?
     「で、面白いビズはあるかね?タキ=サン」タキはまた頭を掻きながら、応じるように部屋の片隅のファイルを取り出した。
     「……これなんかどうだ? 最近、暗黒メガコーポ役員やカチグミ・セレブリティたちの間で、年頃の子息やら令嬢やらの『家出事件』が増えてるようだ。もちろん表沙汰にはなってねえ。『誘拐事件』じゃないってのが、どうもキナ臭いよな。金持ち仲間に誘われて、ドラッグかカルトにでもハマったか……? 居所を突き止めて連れ戻せば、礼金がたんまり貰えるかもな」
     「家出ね……」ライトネスの片隅にマッポ時代の記憶が蘇った。かつて補導した無数の少年少女。ライトネスの“正義”の源である。
     「乗った」ライトネスは二つ返事で引き受けた。タキから投げ渡されたファイルに目をやる。
     「ターゲットはその赤字の奴だ」『アタラシイ・ソリューションズ社の部長令嬢、エモコ』の赤文字。失踪してからまだ日が浅そうだ。説得などで連れ帰れる可能性が高いかもしれない、とライトネスは踏んだ。彼は「調べてみる」とだけ告げ、アジトを出た。

     タキがライトネスに紹介した仕事は『家出したばかりのメガコーポの令嬢、エモコ』を探すことだ。カルトや犯罪組織が関わっている可能性もある。タキはあくまでも情報屋。ここから先は、ハッキングも自分の責任でやらなければならない。
     (カチグミと言やぁ、ネオロポンギだな)ライトネスはネオロポンギに当たりをつけ、怪しい噂などが無いか、現地を調査することにした。彼はそれなりの手練れである。シルバーカラスやブラックヘイズのような一流には到底及ばないが、プロとしての知識、プロとしてのワザマエはあった。再びフードを被り直すと、ライトネスは夕空と重金属酸性雨の中に消えていった。

    ◆◆◆

     ……数時間後!
     ライトネスの姿はカチグミ向け商業施設がいくつか存在する雑居ビルの前にあった。時刻は夜。「リゾートで、おいしいお餅ですね。あなたを癒したい」「オムラのバイオペットは実際安い!」欺瞞的広告音声を流すマグロツェッペリンが彼の上空を通り過ぎる。彼は集めた情報を統合して、このビルでエモコが最後に目撃されたことを突き止めたのである。レインコートの裾には、微かに赤いシミ。情報収集の中で尋問した、さるホームレスの血である!ライトネスは残虐なニンジャである。正義を盾とする、厄介なニンジャである。
     このようなビルのワンフロアが犯罪組織やカルトの根城になっていることは実際珍しくない。しかし高級繁華街のため、セキュリティがそれなりにある。(どう忍び込むか?)ライトネスはいつものように、その優れたニンジャ洞察力を働かせた。ビルの裏口が彼の目に入った。
     足音を殺しながら裏口に近づくと、ライトネスは鮮やかなピッキングで裏口の鍵を解錠した。わずかに扉を開け、中の様子を伺う。扉に仕掛けられたナリコ&コケシ警報装置を確認すると、慣れた手つきでそれを解除した。タツジン!ライトネスは忍び足でビル内部を進んでいく。
     やがて彼が辿りついたのは、ドージョーらしきフロアであった。元はスポーツクラブだったと思しきこのフロアは、邪悪なカラテドージョークラブに作り替えられていた。照明は薄暗く、ジャコウめいた甘ったるい香の煙が立ち込めている。また壁には「ドクノキバ」「コブラ」「世界征服」などと書かれたノボリと共に、鋼鉄の蛇神の頭部を模したレリーフのようなものが飾られている。趣味が悪いな、とライトネスは思った。
     彼が忍び足で歩いて行くと、奥からカラテシャウトが聞こえてきた。「「「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」」」君が中を覗くと……おお、ナムアミダブツ! そこにはジュー・ウェアを着たモータルたちが、男女の区別なく、一心不乱にカラテトレーニングを行っているではないか! ドージョーの隅では、香炉の煙を吸って半狂乱状態になり、黄金のコブラ像に祈りを捧げる者もいる! その異様な光景は完全にカルト……カラテカルトだ!「カルトか」ライトネスは直感した。マッポ時代、彼は同様の光景を無数目の当たりにしてきた。そして、それに所属する者たちは総じて裁くべき悪人であった!ライトネスは内なる正義心を滾らせた。
     彼がゴクリと唾を飲んだ時、壁に掲げられていた鋼鉄コブラ型のレリーフが突然目を輝かせ、電子音声で警告した!『メイヘムよ!侵入者がいるぞ!』と!その直後、前後左右のフスマが同時に開き、ジュー・ウェアを着たカラテカルティストたちがライトネスに襲いかかってきた!ライトネスはフードを目深に被り、ファイティングポーズを取る。彼のレインコートは丈の長い漆黒のニンジャ装束に変わり、白銀のメンポが顔を覆った。

     「ドーモ、ライトネスです。おとなしくお縄に……ダメだな」走りくるカルティストの群れを見据えながら、ライトネスはスリケンを構える。「正義の名のもとに……」ライトネスの目に炎が宿った!その姿は平安時代の勇ましきケビイシ・ガードを思わせた。
     「イヤーッ!」ライトネスは無数のスリケンをカラテカルティストたちに放つ!「「「「グワーッ!」」」」立て続けにカルティストの額に命中!カラテカルティストたちは次々に死体へ変わる。瞬く間にカルティストの数は半数ほどに減った!ライトネスはモータルに対しての慈悲と寛容で知られたマッポであった。犯罪に加担した者であっても、まずは対話を試み、穏便に場を収め法に裁きを任せた。しかし、今彼の正義が導く答えは無慈悲な暴力である!彼自身が裁きなのだ!
     「い、イヤーッ!」一人のカラテカルティストがひるみながらも足払いを放つ!「イヤーッ!」ライトネスは飛び上がって回避!そして空中から「イヤーッ!」さらにスリケン投擲!「「「グワーッ!」」」カラテカルティストたちはさらに半減!いまやその数は四分の一ほどに減少!
     「い、イヤーッ!」一人のカラテカルティストがひるみながらも右フック!「イヤーッ!」ライトネスは頭を軽く動かして回避!そしてさらにスリケン投擲!生き残りに向けて放つ!「「グワーッ!」」カラテカルティストほぼ壊滅!生き残ったのはわずか数人である。ゴウランガ!彼は見事にカラテカルティストたちを蹴散らしたのだ!流れ弾のスリケンが壁のコブラレリーフを破壊した。
     「アイエエエ……コブラカラテ無敵じゃナイノ……?」生き残ったカラテカルティストたちは戦意を喪失した様子である。ライトネスはこぶしを握り締め、笑みを浮かべた。「正義は勝つ……!正義は容赦しない!」ライトネスは生き残りに近づくと……おお、ナムアミダブツ!一人、また一人と首を跳ね飛ばしてゆく!「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」……

    ◆◆◆

     血に染まったドージョーに、ウシミツ・アワーを示す合成マイコ音声が響く。音声が途切れると、沈黙が場を支配した。やがてライトネスの瞳から炎が消え、また虚ろな瞳に戻った。
     ライトネスはさらにフロアを探索し、奥へと進んだ。やがて彼はフートンの敷かれた部屋に辿り着き、そこで眠る少女を発見する。ライトネスはファイルのコピーをコートから取り出し、容貌を照合する。間違いない、エモコだ……!その時、彼の異常な気配を察したのか、エモコが飛び起きた!

     「アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」君の姿を見たエモコは、軽いパニック状態に陥った。だが先ほどのカルティストたちとは異なり、問答無用で襲いかかってくる気配はない。その目は虚ろであった。
     「ドーモ、ライトネスです。アンタを連れ戻しに来た」「私を?」「そうだ。俺が護衛してやる。帰るんだ」ライトネスの声音は心なしか優しかった。マッポ時代の微かな残り香だ。「私は望んでここに来た」「望んで?なぜ」「メガコーポも親もクソだから」「メガコーポがクソなのはその通りだが……」
     ライトネスは微かに共感を覚えた。彼は暗黒メガコーポやソウカイヤ嫌いの珍しいフリーランスニンジャであった。その理由は彼のディセンション経緯にあるが、ここではあえて語るまい。
     「……このドージョーは終わりだ、みんな……」「でもコブラカラテは無敵なの」「いや、だから……!」(こいつは手ごわいな)ライトネスは長期戦の覚悟をした。
     「私はメイヘム=サンに憧れている」「メイヘム=サン?」返事はない。(ジツか)ライトネスは直感的に、エモコがニンジャのジツに魅入られていることを理解する。つまり、このドージョー主であるニンジャがどこかにいる、または、今はたまたま外出しているのだ。「メイヘム」という名前がそれだろうか。だが思い当たるニンジャはいない。君は何をすべきか?ライトネスは封をしていた記憶を脳の奥から引っ張り出した。家出少女を説得し、家に帰らせたあの時。親の感謝の表情。為された正義。
     「なあ、エモコ=サン」返事はない。ライトネスはしゃがみこみ、エモコの瞳をのぞき込む。「あんたは確かにコブラカラテによって救われたのかもしれない。だがな、コブラカラテはあんたを使い捨ての駒の一つとしか見てないんだ。分かるか?いくらでも代わりはいるのさ」「駒……」エモコの瞳がわずかに生気を取り戻した。「だが家族は違う。家族にとって君の代わりはいない。唯一無二の大切な存在だ。……エモコ=サン。君の帰る場所は、そこなんじゃないかな?」おおよそ彼らしくない口調である。ライトネスは自分で少し驚いた。その目に光が一瞬戻ったように見えた。(マッポとしての自分は、捨てたつもりだったが……)
     エモコは催眠が解けたかのように、目をはっきりと見開いた。「アッハイ……! カチグミの友達にパーティーに誘われて、そこから記憶があんまり……ドーモスミマセン!」そしてライトネスに抱きついた!「オイ、待てよ」「……帰りたい!帰りたいよォ……!」そう懇願する。
     『オイ! やったのか!? 早く帰ってこい!』タキから興奮気味の通信!「落ち着けよ、タキ=サン。すぐに帰るさ」ライトネスはエモコをフートンに下ろした。「ちょっと待ってな」エモコの視線を背に、ライトネスはドージョーへ引き返していった。


     「シケてンな」ライトネスはドージョーに置かれていた掛け軸を盗んだり、タンスから万札を抜き取ったりしながら呟いた。暗黒メガコーポやソウカイヤの高給ビズを引き受けたがらないライトネスにとって、こういった“追加報酬”は必要不可欠である。もちろんこの略奪行為は、彼の正義によって肯定される。犯罪者の財産を押収することに、何ら違法性は無い!
     ライトネスがドージョーを漁り尽くしたその時である!KRAAAASH!ドージョーの窓ガラスが外側からのトビゲリで破られる音! 「イヤーッ!」直後、アフリカ投げナイフめいた毒スリケンが彼に向かって飛来した!「イヤーッ!」ライトネスは側転回避!即座にエモコの部屋に滑り込む!
     「ライトネス=サン!」「掴まれ!」ライトネスはエモコを背負うと、ためらいなく窓へ向け疾走する。彼の“正義”に基づくならここでアフリカ投げナイフめいた毒スリケンの投擲者と相対するべきであるが、ライトネスは曲がりなりにもプロであった。
     「イヤーッ!」ライトネスはエモコを背負ったまま飛び出す。雑居ビルのネオンカンバンを蹴って跳躍!それを追う白髪のニンジャ!三者は重金属酸性雨降りしきるネオサイタマの闇へと消えた。

    ◆◆◆

     ライトネスはエモコを背負ったまま、タキの指定したある路地へと無事到着した。
     ネオサイタマの土地勘では、ライトネスの方が一枚も二枚も上手だった。巡回マッポとして行った無数のパトロール。ディセンション後に飛び回ったビル群。ライトネスにとって、ネオサイタマで追跡を撒くことはベイビー・サブミッションであった。
     エモコは疲れ果てたか、もう眠っていた。セキュリティの都合上、メガコーポの両親がライトネスと直接会うことはない。このままエモコを代理のエージェントに引き渡し、それでお別れだ。もう彼女と会うことはないだろう。
     やがて黒塗りの車が路地に侵入し、サイバーサングラスにスーツの男が顔を覗かせた。「ご苦労様です」エモコの両親がよこしたエージェントだ。ライトネスはエモコを車の後部座席に下ろした。彼女の寝顔は安らかであった。
     「オタッシャデー」ライトネスは誰にも聞こえない声量で呟いた。車がエンジン音を立て、走り去っていく。キャバァーン!タキからの入金を告げる電子音が鳴り響く。ドージョーから回収した分と合わせれば、しばらくは何とかなりそうだ。
     『オツカレサマドスエ』タキからの義務的IRC通信。『オツカレサマドスエ』ライトネスも義務的に言葉を返した。『ケモビールを用意しておく』タキは病的な見た目に反し、羽振りのいい男である。『気前のいいことで。すぐに行く』ライトネスは通信を切断した。
     ライトネスは空を見上げた。重金属酸性雨は珍しく止んでいる。彼はフードを下ろし、しばし考え込んでいた。「正義は、勝つ。正義は……」彼は虚空に向け呟く。やがて目に微かな光を宿すと、ライトネスは決断的な足取りで明け方のネオサイタマへ消えていった。
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    MEMO忍殺TRPGソロアドベンチャーのリプレイです。書いてて実際楽しい!
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     キタノ・ディストリクトの空は、今日も黒雲に覆われている。ネオサイタマの風物詩、降りしきる重金属酸性雨をフードでやり過ごしながら、男は地下商店街へ足を踏み入れた。黒のフード付きレインコート、黒のレザーパンツといった出で立ちである。その目は虚ろであった。
     フードの男はスタスタと歩き、突き当りの店にたどり着いた。シャッターは閉まっており、「アカチャン」「そでん」などと書かれた錆びついた看板がかつての栄華を思わせる。フードの男はシャッターをドンドンと叩いた。その音に反応して出てきた別の男が一人。中から出てきたのは、タキと呼ばれるハッカーだ。年齢はハイティーン。腕はそこそこ確かであった。タキの外見はその辺を歩いている貧しい高校生のそれと大して変わらず、着古したダメージジーンズに、底の擦り切れたバスケットシューズを履き、払い下げのアーミー系リペア・テックコートを着ている。ぼさぼさのブロンド髪の奥にある青い目は寝不足のクマに覆われ、疑り深そうだ。
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