楓可不『僕は よね?』 楓ちゃんの様子がおかしい。
僕に対して「かわいい」と言わなくなった。初めのうちは気のせいかと思っていた。ふとした日常の会話の中でも、ベッドの中でも。今までなら「かわいいね」と囁かれたり「かわいい……!」と悶えられていたであろうタイミングで口ごもる。積もり続けた小さな違和感はある時、楓ちゃんが「かわいい」と発言した直後に「可不可のことじゃないよ!」と慌てて取り繕われた時に確信に変わった。
自分で言うのもなんだが僕は美人だと思う。ちいさな頃から「お母さんによく似てる」と幾度となく言われてきた。当時はピンと来なかったけれど、年齢を重ねるとともに自分でもそう感じることが増えた。年々母親に似ていく僕を見て、父さんは時に眩しげに、時に淋しそうに目を細める。要するに、僕はかわいいよりは綺麗に分類されるはずだ。
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