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    *第22回楓可不ワンドロ・ワンライに投稿したものです
    *お題【口裏合わせ】
    *添視点
    *ジュンブライベストカドスト済・BD関連は未のタイミングで書いたものです

    楓可不『言わぬが雲』 昨日、というか日付はとっくに変わっていたから今日なのだが、添がHAMAハウスに帰ってきたのはギリギリ空が白む前だった。楽だと思っていたオシゴトが想像以上に長引いたこともあって、予定のない休日をゆっくり寝て過ごすつもりが、控えめな物音で目が覚めた。スマートフォンの背面に映し出された時計が示すのは六時過ぎ。真下のベッドの犬は遠方での撮影だとかロケだとかで早い時間に起き出すことも珍しくないが、まだ熟睡しているし、そもそも起きたのが練牙ならばもっと気配がうるさい。となれば、物音の発生源は弊社の社長だろう。死に損ないらしく軽い体重が移動する程度の物音では鈍感な練牙はたとえ眠りが浅くても起きはしないだろう。規則正しい生活をしている可不可だが、この時間から起き出しているのは珍しい、たぶん。
    「社長~早いですね」
    「おはよう、添。ごめん、起こした?」
    「いえいえ全然。それよりお出かけですか?」
    「んーまあね」
     身支度をする可不可の足取りはいつもよりほんの少しだけ軽い。歩くたびに少し跳ねるような、足を止めてもリズムが聴こえるような。わかりやすく言うなら、浮かれているような、そんな足取り。
    「ちょっと仕事でね」
     あ、嘘だ。直感的にそう思った。可不可の嘘は分かりにくい。添にも嘘か本当か判断がつかないことがあるし、もしかしたら見逃している嘘もあるかもしれないとさえ思うことがある。それが今の発言は可不可にしては珍しいくらい下手くそな嘘だ。
    「朔次郎は今日は同行しないから何かあったら僕に直接連絡してね。すぐ返せるかはわからないけど」
     今のはたぶん本当。手に取ったスマートフォンには見慣れないストラップがついており、可不可が軽く振るとチリリと小さく音を立てて揺れた。
    「それじゃ、行ってきます」
     いつもより少し……いや、かなり念入りに身だしなみを整えた可不可は軽やかな足取りで部屋を出て行った。
     
     身体は重怠かったが、可不可と話して少し目が冴えてしまった。そうなると煙草を吸いたくなる。この時間の高校生の面々もいないだろうとあたりをつけて、案の定無人だったバルコニーで一服。頭がすっかり覚醒すると、身体が急激に空腹を訴え始める。確か、昨日の夕飯の残りが冷蔵庫にあると雪風から連絡が入っていたはずだ。お節介を鬱陶しく思うことはあるが、美味い飯に罪はない。ありがたくいただこうと降りたキッチンで物音がした。面倒な相手ではないことがわかったので添はそのまま気配を消さずにキッチンに足を踏み入れた。
    「はよございまーす」
    「あ」
     添と目が合った楓はカップを片手にパンを齧っていた。キッチンで立ったまま、袋から出した食パンを皿も使わずに食べている姿を潮あたりが見たら嫌味が飛び出ていたことだろう。
    「おはよう、添くん。えー……っと、コーヒー飲む?」
     インスタントだけど、と言う楓の気まずそうな楓がおかしくて、別に飲みたいわけではなかったが頷くと楓がすぐにコーヒーを適当なカップに注いだ。
    「あざーす。主任、早いですね」
    「うん、ちょっとね」
    「お出かけですか? 友だち?」
    「んー……」
     濁すような反応は楓にしては珍しい。すでに外出の支度を整えたであろう楓はいつもとそれほど変わらないカジュアルな服装だ。けれど、髪がいつもより少し丁寧にセットされている。
    「もしかしてデートとか?」
    「っ……」
     可不可と違って楓は嘘が下手だ。そもそも嘘をつく前に今回のように詰まってしまうことが多いのだから、根本的に向いていないのだろう。
    「ふ~ん……カノジョですか? あ、それともカレシ?」
    「いや、その……」
    「それってオレも知ってる人? 他の人は?」
     例えば社長とか、と訊けばわかりやすく目が泳ぐ。楓のお出かけ相手はどうやら可不可だったらしい。これ以上ここにいない方がいいとようやく気づいたらしい楓がジリジリと添から距離を取るように後退しようとしたところで、楓のスマートフォンが軽やかな通知音を発した。画面を見た楓の顔が綻ぶ。
    「ごめん、俺もう行かなきゃ」
    「あ、カップ、一緒に片付けときますよ」
    「いいの? ありがとう」
     コーヒーを飲み干したカップをシンクに置き、スマートフォンをポケットに突っ込む。ポケットから飛び出たストラップが揺れる。
    「あ、そうだ。さっきの話だけど」
    「うん?」
    「内緒。相手がまだ誰にも言いたくないって言ってるから。添くんもみんなには秘密にしておいてね」
     唇の前で人差し指を立てた楓は日頃のからりとした笑顔とは違う、柔らかな微笑みを浮かべた。添が気づいたことに、楓は気づいているのだろうか。気づいていないだろうな。楓が出て行ったキッチンに朝の静寂が満ちる。
     楓と可不可がふたりで出かけるなんてそれほど珍しいことではない。仕事でも、プライベートでも。それを今更隠したり誤魔化したりするということは――
    「揶揄ったら面白そーだけどしばらくは黙っとこうっと」
     まあ、バレるのは時間の問題だろうけど。とりあえず隠すならあのお揃いのストラップは外した方がいいんじゃないかと思いながら、添はくわりと欠伸をした。
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    Replies from the creator

    __Cwaoa

    DONEHappy Birthday, KAFKA!
    ⚠️BD企画に関する捏造を多量に含みます。

    Happy Birthday, KAFKA!
    あなたの旅がいつもあなたが思い描く以上のものでありますように🤞✨
    楓可不『僕のお気に入り』 mahorovaでのバースデーイベントと並行して記念のブロマイドを作成することになり、話し合いの結果、テーマは『FAV collection』に決まった。誕生日を迎える区長の「お気に入り」をドールボックス風に飾り、撮影するだけでなく、イベント当日は撮影ブースを再現したフォトスポットを設置する予定だ。参加してくれたお客様も、区長たちがお気に入りを詰め込んだ空間で写真を撮れるというわけだ。
     装飾にあたっていくつかの要素は共通とすることになった。ファーストツアーのおもてなしライブで着用した衣装、バースデーパーティー風の撮影のために仕立てたスーツ、HAMAハウスのルームプレート、それからルームメイトのミニアバター。ミニアバターはそれぞれモデルとなった本人たちらしい動きをするように可不可と生行でプログラミングする予定だ。可不可の誕生日用に虎部屋の二人は早めに作っておいた。練牙はプレゼントを渡すタイミングを掴みかねてかソワソワと動き回っているのに対して、興味なさげ気配を消した添はあわよくば抜け出そうと隙を窺っている。
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