毒を食らわば命さゑ
著 ファル・リア
一
郷に帰りたかつた。幸せになりたかつた。母御も父御も流行り病やら飢饉からの飢えやらでポツクリ逝き、住処のなくなつたおれと、血の繋がりのないキヨウダイ(名は吉行)は、這歩く中で、見世物小屋に拾われた。
郷に帰りたかつた。無理だつた。見世商売なぞ倫理のあるものではない。疎な客どもの面前にて蛇を丸呑みせねばならぬとか、嘔吐して見せねばならぬとか、さういうものである。おれはかつては健全な家の出であつて、キヨウダイとともに虫の羽を毟つたり蛇を捻つて弄んでいたものだが、まさかおれがあの遊び道具どもを喰わねばならぬなど、恥でしかなかつた。
抗おうにも、おれもキヨウダイも、齢は十やそこらの子供であつた。逃げようと背を見せた途端に蛇女やらフタナリの野郎の手に絡まれ阻まれ、無益な痛みに苛まれるだけであつた。おれの首を絞めた蛇女が、おれとキヨウダイの耳元でキイキイ叫んだ。
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