妖狐壬氏と雪女猫猫の話そこは天空にあるヒトの入れない、隠された空間。
どこまでも広がる若草色の草原。
空は高く蒼くどこまでも続く。
ヒトの侵入を阻むように断崖絶壁の高地であるこの地に。
世を全てを創造したとされる天御門が今も住むとされる、聖域である。
聖域に入れるのは天御門に仕える、神獣と、天の御門の認めた限られたの妖のみ。
数としては多いとされる狐の妖。
繁栄を誇る妖狐の妖の一族。
それが男がこの場所に出入りすることが出来る所以である。
だが、男には他の狐の妖にはないものがある。
男には尾が九つある。
他の妖狐には尾は一つしかない。
ただ一つ、妖狐の当主という例外を除いては。
世代交代の時に生まれるとされる稀有なその姿を拝めるのは、世代交代を控えているという前触れ。
自分と同じ九つの尾を持つ祖父が当主としておさめる茘の国。
二つとない御姿の自分は、いずれ、その祖父の地位を継がねばならない。
小さな子供から、妙齢の高齢者まで、男が化ける姿は様々ではあるが。
今の姿は、九つの尾を持つ狐の姿。
これが、男の本来の姿である。
ヒトの世に降りる時は、人の形になる。
ヒトがいない今は他者の視線を気にすることもなく、本来の形を取る。
暇になり、男は外に出てきた。
やって来た野原には先客がいた。
三匹の妖狐と一人の色白肌の少女がいた。
少女は、色白の肌に漆黒の髪を持ち、くるんとした黒曜石のような瞳、整った顔立ち。
茘では見ない、男と同じ襟合わせに着る少女の淡い緑の花柄の衣。
その衣に合わせるように、濃い紫の太めの帯。帯の背中側には帯を花のように模して整形し、綺麗にまとめてあった。
少女は花を摘み、妖狐と話している。
一匹の狐には、綺麗な顔を思いっきりしかめ睨みつけたかと思えば。
花を運んできた狐には、笑いかけたりともする。
男はただ、くるくると変わる表情を、気がつけば遠目に追っていた。
少女もここにいれるというのは、妖の一族の証。
時折、ヒトの姿になる狐達。
やはり、兄妹だろうかと思う。
ただ、少女のみが終始ヒトの姿のままであった。
天御門に従える妖、ヒトの姿ではない姿でいる者が多い中で、ヒトの姿の少女は目立つ。
時折笑い、怒る少女に男は目が離せないでいた。
メモ書き_φ(・_・
※天御門と書いているが偉い神のイメージなだけで残してる。話のイメージにあった神様の名前を後でちゃんとしらべて書くこと!