懐古あのあと、無事結婚して程なくして、猫猫の懐妊が明らかになる。
無事に十月十日経ち、女の子が生まれた。
お包みに包まる娘の姿
(いつだったか、同じことされたな。)
今は懐かしい記憶である。
猫猫は、瑞月に包まれ抱き枕のようにされたこと思い出す。
瑞月は、お包みに包まれた娘を大切に、潰してしまわないようにと抱く。その頬はすっかり緩みきっていた。
猫猫はそれを見て穏やかに笑む。
あの時もそんな顔だったのだろうか。
「瑞月さま」
「なんだ?」
「覚えていますか?あなたがこの子のように私を毛布でくるんで抱きしめた事を」
「覚えてはいるが……。それがどうした?」
瑞月の顔が、わずかに苦笑気味に歪んでいる。
「ふと思い出しまして」
「思い出さなくてもいいんだが。いっそのこと、忘れてくれ」
「無理ですね。あの時の瑞月さま、今思えばちょっとかわいかったです。あなたらしいと思いましたよ」
「だからだな」
「あの時は、絶対鳴いてやるかって意地張ってましたけどね」
「だろうな」
ふと漏れた猫猫の本音に、瑞月はそんなことわかっていたとばかりの視線を向けている。
困り顔の瑞月は、変わらずかわいかった。
変わらない瑞月の素の姿に猫猫は笑みを深めるのだった。