秋庭
祝日のない12月。ド平日だし休みもままならない、平日か…と少ししょげてる情報部の子たちに業務を早めに切り上げて軽い食事会っぽいのを開く。
ハンズとかで買ったツリーを晴朗と飾り付けてそれっぽさに満足したりなど。
子たちが眠りに就く頃にそっと枕元にプレゼント置いて晴朗にも花の種やポプリなどを手伝ってくれたお礼にと手渡す。
影でひっそりと手助けをしてくれた上司に礼を言って残りの仕事を片そうとする手を止めて何かと理由つけて愛おしい者と共に家へ帰らせるなどをな。
※同じ職場内にその恋人居るけど、それはそれ。イベントの日はなるべくのんびり過ごして欲しいって意味。
今年も色々あった、その中でも失ったものを取り戻した大事な弟分の春告鳥にせめてもの時を過ごして欲しいという己のエゴだったり願いだったり。
売れ残りのシャンメリーとか買って夜空に乾杯するような、そんなクリスマス。
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クリスマス前に休みがあればクリスマスマーケットとか好きなので行きそう。
去年、春告鳥誘って行って珍しく春告鳥が無理なく完食できたものを思い出して今年も誘おうとしてふと、思い留まり一人で行くような男。
「春待さんに悪いからなぁ…」
そう言いながらもついつい、それを買って食べたり去年もこれ見たなぁっていうのを眺めたりして懐かしくなって。
一人百面相しながら、ポケットに突っ込んでいたスマホ取り出す。
「……あ、八雲くん。今何してた?実はさ…」
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狗飼
クリスマスシーズンは浮かれて騒ぐような連中も居るので、それを取り締まるべく近辺を巡回するのに大忙し。
はしゃぐのは良いけれど、一線超えてしまうのは如何なもんかと溜息の出ることも屡々。
サンタの帽子被って楽しげな小さい子が通るのを眺めて、子供の頃は幼馴染の家か自分の家に集まってクリスマス会をしたなーと懐かしんだり。
今やそんな事もない大人になったか、と冷めかけのココアを飲んで家族とクリスマスを過ごす同僚を見送って後輩との夜間勤務。
「恋人と一緒に過ごしたりしないんですか」って言ってくる後輩に「そんな暇があればな」と短く返して見回りに出向く。
夜景を眺める家族連れや恋人同士を横目に、空気を読まない酔っ払いに事情聴取してタクシーに乗せる。
ライトアップされ煌めくツリーが目立つ、ショップのショーウィンドウに飾られた色の綺麗なガラスペンが目につく。
休憩明け、購入したガラスペン(店で綺麗に包装してもらってちょっと洒落たクリスマスカード付き)とにらめっこしながら(やっちまったな)と思う。
衝動的にこれだ、と選んだ幼馴染によく似合う透明感のある紫色。
黒猫モチーフの看板に何処か彼を浮かべたのも事実で、柄の差し色に自分の好きな色を混じえたのは紛れもないエゴで。
互いに多忙な時期、会える確率などほぼ無いかもしれない。現に、ふらっと現れる時間に居ないのがそれを強調する。しかし。
ひと目でも等と淡い健気さなどはなく。
ただ、脳裏に浮かぶ顔を想いちいさく「触れたい」と呟く。