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    itora_1102

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    itora_1102

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    カピオロ小説の進捗 これめちゃ長くなるなと気づいた
    ※拙作『那由多の先の為のプロローグ』の続き
    ※ワット世界がベースの現代(分岐した世界線的な)

    貴方と共に星空を(仮)そこには、孤独があった。
     深い深い絶望があった。恐怖が足を縫い止めた。落胆が胸を叩き、自身への失望が臓腑を喰い破った。
     
    そこには、祈りがあった。
     燦々と灯る希望があった。勇気が背中を押した。渇望が胸を締め付け、未来への羨望が体を繋ぎ止めた。

     ───どうしてそこまでするんだ?
     『自分』への純粋な疑問だった。
     ───どうしてそこまでするの?
     『自分』への心配の声だった。

    『自分』はただ、愛おしそうに、恋しそうに微笑んでいた。
     ───ごめんなさい。でも、譲れないんだ。
     そうして辿り着いた終点で、世界に融けていく自身の体を見た。でも、その時胸を占めたのは恐怖より───
     


    「……また変な夢か……」
     蝙蝠の耳を持つ青年は目を覚ました。携帯のアラーム音は規則的に鳴り響いている。それを止めてから表示されている時間を確認し、青年───オロルンは思わず頭を抱えた。
     現在時刻は9時ジャスト。現在大学生であるオロルンは見事なまでの寝坊をした事を理解し、急ぐことは諦めてゆっくりとベッドから起き上がった。
    「これも全部、あの変な夢のせいだ。」
     恨み言を吐きながら、数少ない友人へと連絡し、講義のノートを貸して貰えるようお願いをする。気のいい友人は『了解。代わりに次のレポート作成手伝ってくれ』とすぐに了承の返事をくれた。それに感謝と、こちらも承諾の旨を返信し再度ベッドに倒れ込む。
     オロルンの経験上、あの夢を見た後は決まって体調を崩すのだ。その為、今日はこのまま二度寝をしようと決めた。
    「……でも、寝たらまたあの夢見るかも……」
     逃げ場所が無い。けれど、案の定痛み始めた頭と締め付けられるような息苦しさに、呆気なくオロルンはまた眠りについた。


     オロルンは昔から、居場所を作ることが不得意な人間だった。物心着く前に両親は事故死。親戚であるシトラリが後見人となるも、彼女は有名な占い師であちこちを忙しなく走り回っていた。シトラリはそれを申し訳なくて謝ったけれど、それだけ彼女の力が必要な人がいるのだとオロルンは理解していた。
     また、オロルンは人には見えないものが見えていた。俗に言う魂や幽霊と呼ばれるものだ。それらは当たり前のように視界に存在していた。オロルンもそれが『正常』だと思っていた。だがそれは『異常』であると気づいたのは、小学校で手酷いいじめに遭った時だった。
     人の魂が見える事は、その時は悪い方向に働いた。言葉も、行動も、全てが悪意によるものであると分かることは、まだ幼かった心には大きな傷となったのだ。次第に学校へ行けなくなってしまい不登校となったが、お隣さんのイファとの交流もあって中学校後半から復帰し、何だかんだ大学生にまでなれた。彼には感謝してもしきれない。数人の友人も出来たし、そこから知り合いも増えた。バイトも、知り合いから誘われて始めたベースも楽しく続けられている。だからオロルンは、自分は恵まれた環境にいると思っている。


     そんなオロルンの人生に不可解な点があるとすれば、それは時折見る不思議な夢だろう。もう見始めて10年にはなる。
     誰の視点かは分からない。夢を見る時によって、その視点から見る光景は変わっている。そこでの『自分』は、何かを成し遂げようと足掻いていたり、誰かに寄り添っていたり。けれど一番多いのは今日見たような夢だ。『自分』が、消えてしまう夢。それはオロルンにとっては酷く恐ろしい事のはずなのに、その夢の『自分』は恐怖以外に前向きな感情も抱いていた。
     それが、オロルンには理解出来なかった。人とは違う視点を持っていても、居場所を作ることが不得意でも、人の輪の中で生きてきたオロルンにとって、孤独になることは耐え難い事だった。
     その反発からなのか、自分の記憶では無い夢を見ているからなのか。決まって夢を見た後は体調を崩してしまう。それもオロルンが夢を忌避する理由だ。夢は記憶の整理だという。知りもしない記憶を整理したところで何になるのだろう。

     ───本当に?


     ───本当に、知らない記憶なのだろうか?



    「……当たり前だ。僕は、消えた覚えは無い。」
     結局、数時間で目が覚めた。体調は正常に戻っていることに安堵する。時計を見れば昼過ぎ。今から家を出れば午後の講義のいくつかには間に合うだろうかとしばらく思案し、友人への貸しを軽くすべくオロルンは身支度を整えることを決めた。どうか、この後面倒な事は起こりませんようにと、信じてもいない神様に祈った。


     (……確か、ばあちゃんがよく読むラノベではフラグ回収…と言うんだったか。)
     何故か自らを『ばあちゃん』と呼ぶようにと言ったシトラリに頼んで、自身も昔齧った占いを再履修すべきだろうか。そんな現実逃避を始めたオロルンの腕を掴んで離さないのは知らない男だ。服装からしてここら辺で屯しているチンピラだろうか。
     (そういえば、アヤックスが言っていたな。喧嘩を売られたことがあるって。)
     何かと喧嘩っ早い友人を思い浮かべる。腕が立つ彼は売られた喧嘩を丁寧に買い取り、そして二度と売らせない事に長けていた。
    「おい、聞いてんのか!?」
    「……聞いている。腕を離してくれないか?午後の講義には出席したいんだ。」
     それにしてもこの男、無駄に力が強く、そしてしつこい。何がそんなに気に食わないのだろうか。オロルンはただ男とすれ違っただけだ。それなのに急に腕を捕まれ路地に引き摺り込まれた。
    「じゃあさっさとあの『公子』を呼べ!前にアイツとお前が一緒に歩いているところを見たぞ!アイツに痛い目見せねぇと腹の虫が収まらねぇ!!」
     なんとも珍しい。アヤックス──公子、という何故か似合う渾名を持つ彼は喧嘩相手の心を折っていなかったらしい。だが前に本人を見かけた時でなく、こうしてオロルン単体の時に脅しをかける時点で折れてはいるのだろう。
    「それは断る。僕は友人を売ることはしない。アヤックスなら、君のことなんてゴボウを片手で折るくらい簡単に片付けるだろうけど……それでも怪我をしてしまうかもしれない。ゴボウが思ったより固いと危ないから。」
     唐突な野菜の例えにしばらく固まった男は、自分がゴボウに例えられた事に気付くと、顔を真っ赤に染め声を荒らげた。
    「っお前…!黙って聞いてりゃふざけたことぬかしやがって!!」
    「っ……」
     再び力が込められ腕に痛みが走る。思わず顔を顰めてしまう。オロルンは人並みに力はあるが、喧嘩なんて生まれてこの方したことが無いのだ。いい加減大声を出すか、警察を呼ぶと告げるべきかもしれない。
    「いい加減にしてくれないか、これ以上は人を───」


     ふと、気付く。逆光で見えにくい路地の入口。人が立っていた。
     ひやりと、周囲の気温が下がったかのような錯覚。

    「そこで何をしている?」
     低く響く声。チンピラ男も気付いたのか、声を発した人物に目を向ける。
    「ぁ!?んだお前、こいつの知り合いか!?」
    「そうだ。その手を放せ。」
     淡々とした声。冷徹さと厳格さを纏う声に、怒りの色が滲んでいるのが分かり、オロルンは思わず身を竦めた。
     一歩。また一歩。ゆっくりと男性は足を進める。そのひとつひとつがまるで死神の足音のように、次第にチンピラ男の顔色も青ざめていく。怒らせてはいけない生物を怒らせたのだと、気付いたのだろう。
     なんとか体を動かしたチンピラ男は「覚えてろ!」なんて陳腐な捨て台詞を吐いて、最後にオロルンを乱入者の方に突き飛ばし走り去って行った。

    「大丈夫か?」
    「……あぁ。助かった、ありがとう。」
     突き飛ばされたオロルンを簡単に受け止めた人物に目をやる。長い黒髪に青い瞳。体格も良く身長はオロルンよりも大きい。カジュアルながらも品のいい格好をした男性だ。先程までの怒っているかのような雰囲気は無くなっていた。寧ろ、オロルンを心配しているようだった。それも心から。その善意自体は有難いものである。ただ、問題があるのなら───
    「すまない、どこかで会ったことが……?僕には君みたいな知り合いはいないはずなんだが……」
     これだ。さっき男性はオロルンを知り合いと言ったが、オロルンには覚えがない。これはもしかしなくても不審者だろうかと、以前シトラリに言われた『気を付ける三つのこと』を思い出しながら訊ねる。男性は少し目を見開いてから口を開いた。
    「……アヤックスからお前の名を聞いたことがある。オロルン、だろう?彼とは昔からの知り合いでな。容姿も似ていたからもしかしたらと思ってな。……名前は合っているか?」
    「そうか、彼の知り合いだったのか。あぁ、僕はオロルンだ。改めて、助けてくれてありがとう。君の名前を聞いてもいいか?」
     反応に僅かに違和感を覚えたが、アヤックスの知り合いなら大丈夫だろうと警戒を解く。それに何より、この男性の魂は今まで見た中で一番輝いていた。ずっしりとしていて真っ直ぐ。人は言葉で他人を欺くが、魂はその姿を欺けない。オロルンならではの他人を見極める手段だ。
    「前に聞いた時も思ったが、良い名前だ。……俺は、スラーインという。」
    「ありがとう。スラーイン、か……」
     どこかで、聞いたことがあるようなと記憶を探ろうとして、


     ─── ……!!

    「っあ…!?」
     頭が割れるように痛む。心臓が音を立てて跳ねる。息が、上手く出来なくなる。夢を見た時にしか現れなかった症状だ。

     ───…っと、また……

     歓喜が走る。渇望が足を震わせる。
     立っていられなくなって、オロルンはその場に崩れ落ち、

    「オロルン……!?」
     咄嗟にスラーインが抱き留める。そのままゆっくりと、自身も共に座り込むようにして、楽な姿勢を取らせようとする。それがオロルンには申し訳なくて、嬉しくて、安心出来て、恐ろしかった。

    「っ……うる、さい……!!」
     口をついて出たのは、ずっと抱え込んできた怒りだ。
     知りもしない記憶を頭に流し込まれるのも、『自分』の追体験をされるのも、そのせいで体調を崩すのもうんざりだった。何より、まるで『自分』が自分であるかのように感じてしまうのが、嫌だった。

    「僕は、君じゃない……!もう、やめてくれ……」
     知らない、知らない。自分は何も知らない。
     孤独を自ら選び、それが希望の為なんて知らない。
     誰かのために全てを賭すような献身を知らない。
     
     ───目の前のスラーインに出逢えて歓喜に震える心も、自分は知らないのだ。

     一際酷い痛みがオロルンを襲い、そこで意識は途切れた。
     最後に目に入ったのは、スラーインの服を離しはしないと言わんばかりに力が込められた自分の手と、動揺と恐怖に染まった、彼の顔だった。

     
     

     安寧を求めていた。
     それは自分にとってのものであり、身近な人にとってのものでもあり、奇妙な縁で繋がった彼にとってのものでもあった。
     でも、自由になった空を共に見ることは終ぞ叶わなかった。

     (……僕は、それを知らない。知らない、はずだろう)
     言葉が届いたのかは分からないが、いつの間にか目の前にいた人影が、顔なんて分からないのに困ったように笑ったと感じた。

     また目の前に光景が映し出される。

     星空があった。焚き火を囲む人々がいた。『自分』はそれを離れた位置から見ていて、隣に、彼がいて。

    『死』が浮かぶ空があった。『自分』はただ見守ることしか出来なくて。彼は、選んで、そして、

     (後悔、しているのか?)

     悔しかった。情けなかった。不甲斐なかった。
     嬉しかった。安心した。納得してしまった。

     悔いがあるとするならば。気づくのが遅すぎたことだけなのだ。
     
     

     目を開ける。見覚えのない天井に内心首を傾げながら辺りを見渡す。
     どこかの寝室だろうか。オロルンが眠っていたベッドの他には簡素なチェストや備え付けらしいクローゼットがある程度の生活感の無い部屋だ。
    「ここは……?……っ……」
     体を起こそうとして、未だに余韻を引く痛みに顔を歪めベッドに逆戻りする。せめて時間だけでも知りたいと思い、荷物を探そうとしたところで部屋の扉が開いた。
    「目が覚めたか。体調は大丈夫か?」
     扉から現れたのは長身の男性───スラーインだった。
    「君は……スラーイン、だよな?大丈夫だ。……すまない、今の時間を聞いてもいいか…?あとこの状況も……」
     知り合って間もない人間に、介抱までさせてしまったのかと思うと自然と出来る範囲で姿勢が正された。そんなオロルンの様子を見て楽にするように手で示しながら、スラーインはチェストの脇に置かれていたらしいオロルンの鞄を持ち上げる。
    「今は16時になるところだ。あの路地でお前が倒れてから3時間程経ったな。あのまま放って置くことも出来なかったから、一度俺の家に運ばせてもらった。荷物もお前が持っていたものをそのまま持ってきたが、後で不足が無いか確認するといい。」
     そのまま鞄はなるべくオロルンが取りやすい位置に置き直された。
    「そうか……本当にすまない。君に迷惑ばかりかけてしまっていて……」
     思わず布団を握り締める。何か返せるものは無いかと必死に頭を働かせている、と。伸ばされたスラーインの手が横たわったままのオロルンの頭をゆっくりと撫でる。
     「迷惑では無い。お前が無事で何よりだ。」
     頭を撫でられたのは、一体いつぶりだろうか。自分よりずっと大きくて、ひんやりとした手のひら。それが酷く懐かしいものに思えて、強ばっていた体も次第に弛緩していった。
     オロルンはスラーインのことを知らないはずだ。彼のような魂なら、一度見ただけで記憶に焼き付くだろう。そうでないのなら、オロルンはスラーインと出会ったことはない、はずなのだ。
     (そのはずなのに、どうして……)
     どうして、こんなにも泣きたくなるほど嬉しいのだろう。
     
    「……それより、迷惑をかけたのは俺の方だろう。」
    「迷惑?君が……?」
     おそらくスラーインがオロルンに、という事なのだろうが、オロルンには心当たりは全くなかった。自分の方が迷惑をかけている自覚もあったからだ。
    「お前が意識を落とす前。怒っていただろう。」
    「……?…………あ…!!」
     心当たりしかなかった。夢に対する怒りが口に出ていたらしい。オロルンには無意識の事だったが、とんでもない誤解を産みかけていたようだった。
     未だに痛みが残る事なんて忘れて跳ね起きる。そのままの勢いでオロルンは弁明を始めた。誤解を解くのは早ければ早いほどいい。
    「すまない、あれは違うんだ…!あれは、その……自分?への怒りというか……夢に対する苛立ちなんだ。君に対してのものじゃない。君みたいな素晴らしい魂を持っていて、行動にもそれが現れるような人間に怒るだなんて、そんなことは絶対にしないから…!!」
     必死に捲し立てて誤解が解ける事を祈る。急に喋ったせいで息を切らしながら、上手く弁明出来ただろうかとスラーインの顔を見れば、彼はパチリと目を瞬かせていた。それでも年の功なのか、それ以外に変わった様子も無く、寧ろ落ち着くようオロルンの背中を撫でた。ゆっくりとした速度で背中を撫でられることに安堵を覚え、オロルンも次第に落ち着きを取り戻した。
    「……本当にすまない、もう大丈夫だ……」
    「いや、構わない。俺がお前の気に触る事をしたのでは無いかと気がかりだったのでな。」
     しばらくそうして背中を撫でられていたが、ふと、手が離れる。その事に寂しさを覚えながらスラーインの方を見れば、彼は少し迷ってから口を開いた。
    「……初対面の人間に話したくないのなら話さなくてもいいが……気になることがある。」
     そう、前置きを置いて。

    「お前が言っていた『魂』や『夢』について、教えて貰えないだろうか。」

     血の気が引くとはこの事を言うのだろうと、オロルンは実感した。咄嗟に自身の発言を振り返る。そうして気付く。先程の弁明、その中にその単語が出ていたことを。
     はくり、と声は音にならずに口は空気を食むだけだった。
     頭に過ぎるのは、過去の傷。幼い心に刻まれたそれは、癒えたように見えてその実ちっとも癒えてはいなかった。

     (どう、しよう。どうすれば、どうしたら、いい?)

    『気味が悪い』、『頭が可笑しい』、『嘘つき』。そんな言葉を目の前の彼から向けられてしまったら。そう考えるだけでオロルンは絞首刑に掛けられる一歩手前の罪人の心地になってしまう。ぐるぐると思考が着地点を見失い、指先の感覚が無くなるほど布団を握り締める。とうとう息の仕方さえも忘れそうになって、

    「オロルン」

     それは、夜を導く灯台の光のような声だった。
     光に導かれて顔を上げる。思いの外スラーインの顔が近くにあって、オロルンはそこでやっと彼と目が合ったことに気付いた。スラーインの手はオロルンの手に重ねられ、強ばって色が抜け落ちた手を労るように、そっと布団から引き剥がした。そのまま軽く手を握って、スラーインの星を宿す目がオロルンの異彩の目を捉えて離さない。
    「ゆっくり呼吸をするんだ。……出来るな?」
     声に強制力なんて無いはずなのに、不思議とその音はオロルンに『出来る』と安心と確信を与えた。意識してゆっくりと深呼吸をする。音を立てる程に走っていた鼓動は落ち着き、平常へと戻っていく。
    「すまなかった。お前にとっての事の重大さを見間違えていた。」
    「っ……君は、悪くない。本当だ。全部、僕の問題だから……」
     オロルンの覚えている限り、今までただ夢や魂について聞かれただけでこんなに取り乱した事は無かった。その機会がほとんど無かったから、というのもあるがそれ以上に、目の前の会ったばかりの人物からの拒絶が途方もなく恐ろしい事に思えて仕方なかった。
    「……しばらく休むといい。食欲があるのなら軽く食べられるものを持ってこよう。」
     オロルンが落ち着いたのを確認したスラーインの手が離れてしまう。その手を咄嗟に掴む。ぱちりとお互いに目を瞬かせる。驚きながらも平常を保った声で「どうした?」と問うスラーインに対して、オロルンは混乱の只中にいた。反射、本能、先走り───そんな言葉で表せてしまう行動だった。ただ純粋に、この手を離してはいけないと思ってしまったのだ。本当に、今日の自分はおかしい事ばかりだと内心漏らしながら口を開いた。
    「僕は……僕には、いわゆる魂とか幽霊とか、そういうものが見えているんだ。人は嘘をつくけれど、魂はいつだって偽りが無いんだ。」
     話し始めたオロルンに少しばかり動揺してから、スラーインは何も言わず、手を握り返すことで続きを促した。あれほど聞かれただけで取り乱していた事柄を自ら話す。その勇気と覚悟が分からない人間では無かった。
    「君の魂は、真っ直ぐで、輝いていてずっしりとしている。そして、まるでその魂に違わぬように僕を助けてくれた。だから、君は悪い人では無いと思っている。……それに、」


    「夢で、君によく似た人を見ている気がするんだ。君とは今日がはじめましてなのに。」
     目を閉じて思い返すのは、『自分』が見た星空。
     隣に座っていた『彼』は、スラーインに似ていた気がする。

     


     
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