台風の日の夜に双子が同じ布団で寝る話 ❄
「鈴々、そっちに行ってもいい?」
そう声をかけると、布団がもぞもぞ動いて鈴々の頭が出てきた。
「……なに、眠れないの?」
「うん……風の音がこわくて」
わたしがそう言うと、鈴々は呆れたようにため息をついた。
「もう、しょうがないなあ……菜々は怖がりなんだから。ほら」
「鈴々ありがとう、大好き!」
鈴々が端っこをめくってくれた布団に滑りこむ。
頭をごっつんこしないように気をつけながら、布団の中で鈴々にぴったりくっつく。
とくん、とくん、と鈴々の心臓の音がきこえる。おでこから温もりが伝わってくる。
「鈴々、あったかい……くっついてるとぽかぽかする」
「そのまま目を閉じてれば、すぐに眠れるよ」
「うん……おやすみ、鈴々……」
「おやすみ、菜々」
鈴々の言うとおり、目を閉じるとすぐに眠たくなった。
だいじょうぶ。雨の音も、風の音も、もうこわくない。だって鈴々といっしょだから。
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「鈴々、そっちに行ってもいい?」
目を開けると、はしごを上ってきた菜々の顔が近くにあった。
「……なに、眠れないの?」
「うん……風の音がこわくて」
「もう、しょうがないなあ……菜々は怖がりなんだから。ほら」
ほんとはボクもちょっと怖くて、ひとりで寝るのは心細かった。
でも、それがばれるのはイヤだったから、わざと眠そうな声で返事をした。
「鈴々ありがとう、大好き!」
そんなことを知らない菜々は、無邪気にボクにくっついてくる。
かわいいかわいい、ボクの菜々。首元に髪の毛があたって、ちょっとくすぐったい。
「鈴々、あったかい……くっついてるとぽかぽかする」
「そのまま目を閉じてれば、すぐに眠れるよ」
「うん……おやすみ、鈴々……」
「おやすみ、菜々」
世界で一番大切な片割れの隣で、ボクもそっと目を閉じる。
胸がぽかぽかするのはきっと、さっき菜々からもらった『大好き』のせいだ。