「君を召し抱えるにはどうすれば良いんだい」
マーリンは遂に、この頃彼の思考の殆どを埋め尽くしていた問題について、その原因たる男へ解決策の提示を求めた。唐突であった筈のその問い掛けに、しかし意外にも男、ヴァレンはのんびりとした笑みを崩さぬままに温かな紅茶を含む。
「おいおい、俺は騎士だぜ?それがそう簡単に主人を鞍替えなんて出来るわけがないだろ」
「君はかつて、僕が〝マーリン〟であるなら、仕えることを検討してやっても良いと言ったね」
「…記憶違いじゃないか?君はその辺、そそっかしい所があるらしいし」
稀代のメイジの追及に白々しくそう言って、カップをソーサーに戻す落ち着いた所作をじっと眺めた。すると空気の読める騎士の居心地は相応に悪くなったらしく、小さく悪かったよ、と軽く尖った唇のままで詫びられる。
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