峠前の茶屋所【離💊さんと🌸の会話】「…よし!これで完成!!」
ジメジメとした梅雨が明け、陽が照りつく季節となってきた。旅人や飛脚の往来が多い峠前の茶屋所では、夏の日差しを避ける為の大きな日除傘を床几台(しょうぎだい)と共に広げ、夏が来た事を知らせる風鈴を🌸が店の軒下に取り付けていた。時折り吹く風を受けてチリ、チリン…と可愛らしく、心地の良い音を奏でる風鈴に
「ふふっ、今年もよろしくね。」
と🌸は金魚の絵が描かれた風鈴を優しく撫でてから踏み台にしていた椅子から降り、店内に入る。
店では店主である父と母が開店前の準備に追われていた。夏の時期のみに提供をしている食事などの下拵えだ。父は鰻を慣れた手つきで捌き、身を串に刺し、自ら仕込んだたれを刷毛で塗りながら焼いていき、母は天草から作ったところてんを突き器にいれ麺状にしては水を張った桶に溜めていく。
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