泡沫夢幻の肖像 ヴァルバトーゼは、人間界に城を一つと魔界・人間界各地に屋敷をいくつか保有していた。人間の血が食事であるヴァルバトーゼにとっては魔界から出向くより、人間界に留まって向かうほうが都合のよいこともあったからだ。
祖先から継承したという城はいかにも厳かで、年季を感じるものであった。
石造りの外観をしており、眼の前には湖が広がっていた。周囲は色の濃い森で人の気配はない。ただ野生生物が弱肉強食の中で生存していた。
城の監視塔へ登ると手前は青々とした緑で、奥に薄い青緑の霞かかった山々が悠々と広がっている。
二人は、この静かな場所から夜な夜な狩りへ向かうのであった。
ヴァルバトーゼが狩りに行く以外は広い城に、主人と従者の二人きりだ。
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