無題 ねぇ、貴方かわいそうにね。
ずっとずっと昔、今よりもずっと髪の色が黒かったころ。村に住んでいた年上の少女から、急にそんなことを言われたことを覚えている。
貴方はベータだから、運命がいないのよ。
そう言って、冷めた顔で笑う。彼女のことが、自分は少し怖かった。その頃の自分はいまよりも幼くて、覚えたてのポケモンバトルに熱中してのめり込んでいた。あと少しで、冒険に出ることが赦される。そんな年に、出会ったのが彼女だった気がする。───、今思えば分かる、あれは生まれて初めて人から向けられた羨望だったのだ。人口の少ない村では、根も葉もないうわさがいつも飛び交っていて。その話題の一つには、周囲から腫れもの扱いされていた彼女がいた。
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