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    ヨキ野郎

    @yoki_idaz

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    ヨキ野郎

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    36時間で12騎ネタをやりたいがためにちまちま書いたF/S/Sパロのイデアズ①
    MHマイトのイデアがハーツラビュルに訪れたその日は、父が育てたファティマ・アズールのお披露目で、という話。
    最初にちょっと流したとこ含めて推敲したとこまで。

    ・新設定には未対応
    ・ご都合独自設定
    ・なんでも許せる方向けでひとつ

    --------------

    永遠は、夢の中にだけ。


    日が昇る前の荒野を、黒鉄の城が疾っている。
    モーター・ヘッドと呼ばれる巨大人型兵器が、国家間の交渉における人民の名代として戦場を駆けるようになって久しく、さほど珍しくもない光景になった。
    漆黒のカラーリングに青いカラー・シグナルを備えたそのモーター・ドーリーには、ほとんどがそうであるように、人型複座式兵器が一騎と、人型生命体がふたり。


    MHマイトの朝は早い――。
    脳内モノローグを入れながら、イデアは固いソファの上でむくりと起き上がった。展開しっぱなしのモニタが薄暗い部屋で製作途中の設計図を光らせていて、朝日よりも先にそれを浴びる。
    朝は早いと言うより、朝方まで作業して昼寝る、のほうが正しい。いい加減ベッドをここに置いたほうがいいだろうか。
    泥のような眠りの中、夢を見ていた気がする。中身はまったく覚えていないのに、意味もなく急かされているような心地になって、イデアは二度寝もせずにのそりとソファから立ち上がった。

    「あれ、おはよう兄さん。もう起きたの?」
    「ンー……白雪ちゃんの新ベイルの設計、まだいじりたいとこあっへ……」
    洗面ブースでよろよろ歯を磨きながら、背後からやってきたオルトを鏡の中からしょぼしょぼ見返す。実質半分寝ているようなものだったのに、鏡に映るオルトが公式な場で使用する式典用のギアに換装しているのに気がついた。
    なんか出かける用事あったっけ……と思い出そうとしてみたものの、設計中はわりと精神と時の部屋状態になっていて、実際に時は止まっていないものだから、たいていイデアだけ現実からおいてきぼりだ。

    「ンエ? あれこれどこ向かってんの?」
    「どこって、ハーツラビュルだよ。到着までおよそ45分」
    「ヘァ!?」
    イデアは歯ブラシを口からぶっ飛ばして、居住区内の小さな窓に張り付いた。
    のちの快晴を約束されたような、雲ひとつない朝焼け空はまだ夜の名残をひっかけていて、うっとりするような薔薇色に染まっている。大地では本物の薔薇が街路のあらゆるところで咲いていて、整然と整備されたそれは迷路のようであった。
    上から下を見た後、右から左に視線を動かすと、予想通りのものが見えてイデアは瞬きを繰り返した。
    遠くはるか向こうに、おそらく目的地であるそびえ立つ王城。その隣に、鮮やかな機体を朝日に浮かび上がらせた真紅の電気騎士が、太刀型の剣を大地に突き立てすっくと立ち、城下を睥睨していた。
    ハーツラビュルの象徴たるMH、クイーン・オブ・ハートだ。
    「うぇあ、クインちゃん様今日もうつくし……神作画……どやったらあんなライン出せんの……って、まじでハーツラビュルなんですけど!? どゆこと!?」
    「僕はちゃんと招待状の返事を聞いたし、進路変更のアナウンスもしたよ。一ヶ月前も、一週間前も、三日前からも毎日カウントしたじゃない」

    ここ数ヶ月はポムフィオーレから依頼されたMHの主兵装の開発にかかりきりで、寝る間も惜しんで設計図を引いて、好きなだけ趣味に走った装飾品を添えるのに全神経をぶっ込んでいた。その間の自身の生命活動を、弟と呼ぶファティマ・オルトの人智を超えたサポートに頼りきりであったことは間違いない。
    そのせいだとは言わないがこのところ、オルトの兄に対する扱いはずいぶんずさんになってきていて、確認さえとればあとで文句は言わせないスタンスに移行してきている。そういうやり方は兄さんに効く。

    「今日はファティマのお披露目式。アズールさんの晴れ舞台だよ! めいっぱいオシャレして祝わなくちゃね!」

    イデアは秒で理解した。
    設計という繊細な作業の合間、外界からの情報を精査する際、イデアの高性能な耳はアズールという単語を無意識に除外していたのだった。



    イデアの父である通称シュラウド・メジャーは、この星団でも三本の指に数えられる高名なファティマ・マイスターだ。
    彼の作品はマインドコントロールが非常に繊細に設定されていて、星団法すれすれを綺麗に滑空するほどの尖った性能と性質をもつ。ハーツラビュルのリドル、ディアソムニアのリリアなどはその典型的な例だ。
    また最大の特徴として、女性型よりも生育の難しい男性型を好んで設計することで有名だ。
    グレート・セブン・シリーズと呼ばれる男性型ファティマはこれまでに六体が成人していて、最後の一体である『慈悲のアズール』の完成を待つばかりだった。

    そんな父の元で育ったシュラウド・マイナーであるイデアもまた5本線のマイトであったが、父の研究をサポートする傍ら、ダブルマイトの可能性も期待されながらファティマ・マイトにはならなかった。
    最初で最後の作品であるファティマ・オルトを完成させた後、モーター・ヘッドの設計にのめり込み、ブラックベースと言う名の大型ドーリーを完成させた途端にイグニハイドを出奔すると、十年ほどを七つの国をめぐりつつ武者修行に明け暮れた。その間にサバナクローの『バーバリ』、ポムフィオーレの『キオナティ』を設計している。
    MHあるところ=戦場にどこからともなく現れる、神出鬼没の青い死神と呼ばれていることを本人は知らない。



    そしてその死神はいま現在、子どもみたいにひっくり返ってひたすら駄々をこねていた。
    「ヤダーーーッたくさん人がいる!! ぜったい行きたくない!!」
    「ダメだよ、兄さん。めずらしく他の兄さんたちも会場に揃うみたいだし、父さんから絶対生身で連れてくるように言われてるから、タブレットも封印したからね」
    「オルトの製作者(父さん)は拙者ですけどぉ!?」
    「そう、僕の演算ゲージを3Aに仕上げたのは兄さんでしょ。行かなかった場合、どうシュミレートしても兄さんは向こう3年くらいは使い物にならないから。ほら!」
    ファティマらしく冷徹に合理性を追求するオルトにバスルームにぶっこまれて、羊の毛刈りみたいに丸洗いされたのちめちゃめちゃ布のもたつく黒い正装を着せられ、長い炎の髪もイグニハイドカラーのブルーのリボンを編み込んだ、ゆるいみつ編みに結われる。
    会場に放り込まれた時にはすっかり緊張する気力も失われたイデアは、疲れ果てて即座に壁と仲良くなった。オルトは兄さんたちに挨拶してくる、とイデアを置いていってしまったしで、もう心の余裕がびた一文ない。飲み物を持ったスタッフが近寄ってくるが、目も合わさずにすごい勢いで片手を上げて断る。

    「ハー帰りたい……騎士でもないのになんでお披露目なんかに来なきゃなんないの……いまさらあの子に合わせる顔なんかないよ……ていうか呼びつけといて父さんいなくね? これもう帰っていんじゃね?」
    ぶつぶつオタク特有の早口独り言を言いながら、一見微動だにせず壁の花に徹しているようだが、その実よその野良猫の縄張りで動けなくなっている脱走家猫みたいにブルっているだけだった。
    あらゆる国からファティマを求めてやってきた騎士や王族で、お披露目会場は人種と民族衣装の博覧会の様相だ。これならおとなしくしていれば埋没できると踏んだが、本人に自覚はなくとも顔面はそこそこ整っている上、炎のように揺らめく青い髪は放っておいても目立つ。案の定すぐにも知り合いから声がかかった。

    「うわっ、マイナーじゃないスか。生身で会うの久しぶりッスねぇ」
    「ヒッ、ラギー氏……」

    突然声をかけられた驚きで垂直に飛び上がるイデアを見て、式典用の白と金で誂えられたファティマ・スーツに身を包んだラギーが肩をすくめると、頭の両側についた三角形の耳介がぴるぴると動く。

    サバナクローの第二王子レオナをパートナーにしたラギーは、キングスカラー家専用に設計された特殊なファティマで、頭部受信機の――ほとんどがヘッドクリスタルであるのは周知の事実だが――かわりになぜか猫耳がついていた。
    ちなみにどのくらい意識が高いかと言うと、この耳半分は生体で、ラギーの意思に沿って動き、ご丁寧に痛覚もある。
    確かにサバナクローは獣人の国だが、後にも先にも耳付き尻尾付きのファティマはラギーしかいない。そういうところがファナティック雑技団とか言われるんだよ、父さん。
    イデアはその頃まだ若かったので、父のそのニッチな所業を問いただすべきか一瞬悩んだが、どっちかというと軟骨状にした受信回路をどうやってあのラインに仕上げるかにが神経が引っ張られてすぐに忘れた。

    「かか帰りたいのに動けないんだが?」
    「シシッ、相変わらずッスねぇ! 戦場にはどんだけ人がいたって突っ込んでくるのに」
    「じろじろ見られたりとか無駄な世間話とかいう余計なタスクがなきゃ人混みなんざ余裕のよっちゃんですが? それに拙者がやったほうが早いでしょ」
    「さっすが戦時に12台のMHを36時間でハンガーアウトした伝説のMHマイト様は言うこと違うッスわ〜」
    シュラウド・ファティマは兄弟みたいなもので、それ以上に父のしつけ(マインドコントロール)の問題で、ラギーの口調はものすごく気安い。ファティマとしてはわりと問題外のふるまいだが、今現在の環境が非日常過ぎてイデアとしては有り難かった。

    そうこうしていると、噂の第二王子がやたらきらきらしながらやってきた。
    「ラギー、うろちょろするな。手癖を出してねぇだろうな……と、まだ生きてやがったのか、カイワレ大根」
    「んお、レオナ氏乙ー。リィオゥの調子どっすか」
    サバナクローのレオナ・キングスカラーは、本物の獅子の耳を持つ獣人だ。
    褐色の肌の美丈夫に、豪奢な白と金の騎士服が恐ろしいほどに似合っていて、マントの内側にちらりと見える長い尻尾は不機嫌そうに先端だけが揺れている。
    「『バーバリ』だ。そのふざけたテストネームで呼ぶのはやめろ」
    「アナザーネームのロマンがわからないとは……かのゴッダムシリーズで、汎用の量産型でありながらTV版で初めて主人公機になった機体ですぞ」
    ぶっちゃけイデアがMHマイトの方向に舵を切ったのは、ゴッダムシリーズリアル再現が理由であったと言っても過言ではない。

    「チッ。てめぇがマイトじゃなかったらこの場でなますに刻んでやったのに」
    「マイナーにオーバーホール頼むと相場の倍以上お金かかるんでそれもいいかなぁ」
    「ラギー氏ィ」
    「でもあの可動パーツ倍率ドンのぬるぬる変態MHのクオリティが維持できないんスよねぇ」
    「言い方! レオナ氏の注文ぜんぶ聞いたらああなったんじゃん!」

    壁際でわちゃわちゃしているうちに、会場では会場であるハーツラビュルのお役人が、高らかに口上を述べ始めた。
    「本日この佳き日に、薔薇の国へお集まりの紳士淑女の皆様―――」
    見届人による制約の告示を終えると、盛大にお披露目式の開始が宣言された。
    歓声と万雷の拍手を機に、一斉に人波が大移動を始める。壇上には、この日のために調整を終えたファティマたちがひとりひとり現れて、広間にさざめく騎士の中からただ一人のマスターを選ぶべく、目通りを繰り返す。

    ファティマの銘と名前が読み上げられる中、人熱れに刻一刻と弱っていると、ラギーがひょこりとこちらを覗き込んでくる。
    「アズールくんは最後ッスかねぇ、今回の目玉ですもん。マイナー、やっぱりアズールくんが心配で見に来たんッスか?」
    「べっべべ別にそんなことないですし! アズール氏なら実益兼ねてべらぼうにお金持ちのとこに嫁いでくれると思いますしおすし」

    シュラウド・ファティマはなぜか一定確率で守銭奴の性質が顕著になる。アズールもそうだが、このラギーが最たる例だ。
    技術者脳の父が仕事以外のすべての些事を金で解決しようとしたため、目の前で湯水のように無駄マドルを消費しまくっていたのが原因ではないかと思われるが、何の慰めにもならないのでデータは取っていない。

    「またまた〜、マイナーめちゃめちゃアズールくん可愛がってたし、アズールくんもマイナーにめちゃめちゃ懐いてたじゃないッスか〜。しょっちゅう『イデアさんはぼくのマスターになるんです』って言ってたし」
    「………」

    イデアはつきっきりでもろもろの教育係をしていた、まだ幼体のアズールに初めてそれを言われた時、脊髄反射で『むり』って言っちゃったことを思い出し、重めのボディをくらったみたいに痛む胃を押さえた。
    それから成人前の二次教育の育成ポッドに入るまで、延々と同じことを言われ続けることになったことも。

    『イデアさん、僕と契約してマスターになってください!』
    『拙者がまほうしょうじょに……?(トゥンク)って、いやそれダメなほうの契約では!? もーっ、なんて言われたってダメだから! ちゃんと騎士様選んで!』

    星団法でマイトがマスターになれないことを、教育課程を鑑みてもアズールが知らないわけはなかった。それでも彼はイデアに会えば、いつだってそう要求した。
    ファティマに許されたたったひとつの小さな願いを、自分などが踏みにじらなければならないのに耐えかねて、アズールがポッドに入った後に逃げるように国を出た。実質逃げた。

    ただでさえ生きてくだけでいろいろ踏み外してしまうのに、あの子を道連れになんてできない、どんなにそうしてしまいたいと思ったって。
    だけど誰かがいつかあの子の手を取るかと思うと、喉の奥から尻尾の骨の先までが得体のしれないものでいっぱいになって、真っ黒で汚らしいそれを吐き出しそうになる。

    国を出た後、確かに3年ばかりがむしゃらに戦場を駆け巡っていたけど、別に使い物にならないわけじゃなかった。ちゃんと息はしてたし(食事はしなかったかもしれない)、MHは直したし(ぶっ倒れるまで)、むしろよくやった方では?
    オルトが聞けばお仕置き砲くらいはぶっ放されそうな図々しいことを思いながら、手汗でぐしょぐしょの手を握り直したところで、壇上がざわめいて顔を上げる。

    「それではご来場の皆様、お待たせいたしました。シュラウド公最新作、アズール!」

    ひときわ華やかな声が上がり、広間の視線がいっせいに壇上に向かう。
    緋色の布の奥から現れたファティマは、深いブルー・ブラックのタキシードを模したファティマ・スーツを纏った、透き通るような色合いの少年の姿をしていた。
    広間はしん、と深海の底のように静まり返る。
    月の色を溶かし込んだような静かな光をたたえる銀糸の髪、白皙の面に空を写すスカイ・ブルーの瞳。すっとなめらかに通る鼻筋、つくりものじみて薄く小さなくちびる。繊細な顔立ちにも関わらず、ヒールのあるショートブーツで壇上に進み出るその姿は毅然として神々しくすらあった。
    右サイドだけセットされた銀の髪に装飾品のように収まったヘッド・クリスタルは深いブラックだが、壇上の光源の下で時折ブルーを透かす。タキシードのテールは腰の切替からたっぷりとドレープを取られていて、シュラウドの財を尽くした宝石が大小、星屑のように埋め込まれていた。
    繊細な銀細工のつるの眼鏡と、ファティマには本来存在しない口元のほくろは、また今回のこだわりニッチポイントなのだろう。それすらプラスの要素でしかない、相も変わらず爪の先まで完璧な造形だ。

    「おおー。仕上げてきたッスねぇ、さすがメジャー」
    ラギーが軽やかに口笛を吹き、両手を握りしめて固まっていたイデアはびくりと肩を揺らす。
    その様子にラギーは何故かにやりと片頬を上げると、「ほんじゃ、うちのジャックくんのお守りしてくるッス〜」とレオナと連れ立って行ってしまった。パートナーを探している若い騎士の付添いで来ているのだ。

    物理的障壁が二枚なくなってしまったので、イデアは壁沿いに知らない人の後ろをコソコソと移動しながら、壇上を伺った。
    アズールはオクタヴィネルの双子騎士・リーチ兄弟につっつき回されてうっとうしそうにしている。二人は以前からシュラウドに出入りしていたので、昔なじみなのだ。
    しかし、身の丈190近い双子に囲まれた小さなアズールは、もうどうしようもないくらい幼気で――いやまてよ。
    「え、あれ、なんでS型? 父さんM型で設計上げてなかった?」
    ファティマの外見は規定によって定められていて、少年型、青年型、成人型に分けられる。
    優秀なマイトはファティマの設計にあたり、取り掛かった時点で完成図は脳内に仕上がっているものだ。イデアも彼の設計基を見たことがあるが――

    「――アズールは自分で成長を止めたそうだよ。シュラウド・マイナー」

    横から麗しくも厳しい声音が投げかけられて、イデアはぎくりと動きを止めた。
    「本来ならポッドアウトだってあと数年はかかるはずだった。教育課程終了も異例の速度だったらしいね。お父様の技術の集大成、当代最高傑作と言えるだろう。――その偉大な父上の呼び出しに応じないなんて、いったいどういう了見なんだい、マイナー」
    「ぴえ……リ、リドル氏っ」
    赤を基調にしたファティマ・スーツに身を包み、ワインレッドの髪にちょこんとクラウン型のクリスタルを乗せたファティマが厳しい表情で仁王立ちしているのを見るや、イデアは壁に背中をぶつけるくらい後退った。
    『厳格のリドル』はハーツラビュルの薔薇騎士専用に設計されたグレート・セブン・シリーズだ。その通り名に恥じない規則一辺倒の理論偏重型ファティマで、常に規則の抜け道を爆走したり最短ルートを突貫したりしているイデアとはいまいち相性が良くなかった。

    「まあまあ、リドル。いきなり喧嘩腰じゃイデアも答えにくいだろ。対人恐怖症でビビリで引きこもりなのに、ひとりでここにいるってだけでも百点花丸だ」
    横からひょいと、リドルのパートナーの薔薇騎士トレイが顔を出す。揃いの騎士服が目に明るい。
    微妙に言いたい放題言われながらもすわ天の助け、と思ったが、自分にもかなり厳しいが他人にもじゅうぶん厳しいリドルはきりきりと眉をつり上げた。
    「何を甘っちょろいことをお云いだい、マスター。そんな調子でお父様や周りが甘やかすからマイナーがこんなことになったんだろう」
    「はは、手厳しいな。すまんイデア、俺じゃ力になれないようだ」
    「トレイ氏ぃ〜」
    あっさり手のひらを返すトレイにすがり付こうとするイデアを押しのけ、つんと顎をそらしたリドルは言う。
    「お父様は上のVIP用の観覧室でお待ちだよ、いつまでもオルトに甘えていないで、ご自分でなんとかするんだね」
    「戦闘ゲージバグってMH降りたら運痴のくせに……」
    「なんだって!?」
    「やーいドジっ子!」
    ウギられる前に走って逃げた。こういう時だけ逃げ足が早いのは引きこもりの必須技能である。
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    MHマイトのイデアがハーツラビュルに訪れたその日は、父が育てたファティマ・アズールのお披露目で、という話。
    最初にちょっと流したとこ含めて推敲したとこまで。

    ・新設定には未対応
    ・ご都合独自設定
    ・なんでも許せる方向けでひとつ

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    日が昇る前の荒野を、黒鉄の城が疾っている。
    モーター・ヘッドと呼ばれる巨大人型兵器が、国家間の交渉における人民の名代として戦場を駆けるようになって久しく、さほど珍しくもない光景になった。
    漆黒のカラーリングに青いカラー・シグナルを備えたそのモーター・ドーリーには、ほとんどがそうであるように、人型複座式兵器が一騎と、人型生命体がふたり。


    MHマイトの朝は早い――。
    脳内モノローグを入れながら、イデアは固いソファの上でむくりと起き上がった。展開しっぱなしのモニタが薄暗い部屋で製作途中の設計図を光らせていて、朝日よりも先にそれを浴びる。
    朝は早いと言うより、朝方まで作業して昼寝る、のほうが正しい。いい加減ベッドをここに置いたほうがいいだろうか。
    泥のような眠りの中、夢を見ていた気がする。中身はまったく覚えていないのに、意味もなく急かされているような心地になって、イデアは二度寝もせずにのそりとソファから立ち上がった。

    「あれ、おはよう兄さん。もう起きたの?」
    「ンー……白雪ちゃんの新ベイルの設計、まだいじりたいとこあっへ……」
    洗面ブースでよろよろ歯を磨きなが 7590

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