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    薄桜鬼 真改、薄桜鬼 真改 万葉ノ抄、薄桜鬼 真改 銀星ノ抄の内容を含めています。

    不自然な日本語の表現が存在する可能性があります。
    短冊の内容はオト○イトスタッフブログから参考いただきました。

    スタッフブログ 》http:// blog.otomate.jp/staffblog/2010/07/post-405.html

    叶うコト蝉の鳴き声とともに、平助と千鶴の雪村の里での日々が始まった。山奥に位置し、人の往来がないため、幸か不幸か雪村の里は、千鶴が里を去った日と大差なかった。里の人々の平穏を祈った二人の平穏は簡単ではなかった。暑さと日差しは木の下で避けられたが、いつまでも野宿をするわけにはいかなかった。しかし、里にはまともな家と呼べるものが残っていなかった。それで二人は家を建てることにした。初は失敗もあったが、いつの間にか自分たちなりのコツを捕まえて、どんどん家らしい家を建てていた。

    この物語は「雪村の里」に住む二人の慶応4年夏の物語。

    かんかん。

    薄日にも音があれば、蝉の鳴き声と競合していると感じるほど鋭く降り注いでいた。まだ羅刹の気質が強い平助のために、町へ降りるのはいつも午後になってからだった。夕暮れ時に到着した街の雰囲気はいつもと違っていて、いつもより早く閉店している店もあれば、これから始まるような店もあった。何よりも人々が多かった。

    「今日は人が多いね。」

    「ああ、今日、なんかあんのか?」

    千鶴の感想に、平助はすぐに隣の通行人に尋ねた。ありがとう! と挨拶して戻ってきた平助は、千鶴に聞いた話を伝えた。

    「この近くに神社があんだろ? その神社の近くで、七夕祭りがあるだってよ。」

    「もう七夕に...」

    「ねえ、千鶴。よかったら見て行かない? 正直にさ、オレたち今まで大変なことばかだったからさ、こういう日も必要なんじゃね?荷物はオレが全部持ってるから。」

    改めて時間の流れを感じた千鶴に、平助が提案した。 二人で過ごした最後のお祭りを思い出すと、少し苦々しい気持ちになった。

    「そうしようかな、でも私の荷物は私が持ちたい。それなりの体力あるよ?知ってるでしょう?」

    「それはわかってるけど...それでも俺がやりたいんだよ!」

    荷物を奪われないように少し先を行く千鶴を見て、苦笑いする平助は小さくつぶやいた。
    もう本当に、普通の町娘になったんじゃねえか...


    色んな屋台を見物していると、千鶴が口を開いた。

    「お祭りがあると知っていれば、平助君が贈ってくれた髪飾りをつけてたのに。」

    「さっき新しいもん贈って言ってたのに。」

    「それはだめよ。今は節約が最優先。」

    「そりゃ、まあ...そうだな...。」

    千鶴の小言に、平助は訝しげに目を逸らした。 それでも二人は手をぎゅっとつないだまま、お祭りに染まった街を歩いた。


    どのような任務も、立場の違いもなく迎えた初めての祭り。
    少し前までは、血と死で作られた薄氷の上を歩く様な日々だった。そこから逃げてたどり着いた千鶴の故郷。抗争の脅威と遠く離れた田舎で、二人は小さな平和を感じながらゆっくりと階段を上る。階段を登ってたどり着いた神社では、人々が一斉に集まっていた。短冊を書くために集まっているようだった。

    「ねえ、千鶴。あれを書くか?」

    「うーん......ええと、平助君は?」

    「オレは...元々、こんなもんわざわざ書かない方なんだ。 でも、今回はやってみようかな...」

    「私は書く方。でも、もう書かなくても大丈夫だと思う...」

    なぜか二人は寂しそうな表情で、お互いに言い残すように言葉を重ねる。互いの相反する反応に、二人の雰囲気はぎこちなくなった。長い沈黙の中、最初に口を開いたのは平助だった。

    「じゃあ、一緒に書こうか?オレ、こんなのほぼ初めてみたいなもんだし。 二人の分を込めれば、ちゃんと叶うかもしれないだろう?」

    「そうしようか?」

    平助の提案に、千鶴はさっきの寂しそうな表情は消え、明るく微笑んだ。

    「実はオレ、こういうのは誰かに願うより、オレで叶う!ってほうなんだからさ。千鶴、おまえの願い事の中で、オレが叶えてあげられるものがあれば、オレが叶えてあげる。」

    「あはは、それじゃあ一緒に願う願いじゃないと思うよ。」

    「でも、叶えたってのは同じじゃん! オレはいつもおまえとの約束は守るって言ってたから、必ず叶えてあげるよ。」

    「平助君...じゃあ、早く列に並びましょう!」

    平助の返答に喜んだ千鶴は、人々が並んでいるところへ駆け寄った。
    並んだ後、振り返って自分を呼ぶ千鶴の姿を見て、平助も負い目が少しは軽くなった気がした。


    「それでね、何を書こうかな。」

    短冊を受け取った千鶴が悩んでいると、その横で平助が声をかける。

    「早く家が建てられますように?」

    「それはするべき事です。」

    「いつもは何を書いてた?」

    「うーん...小さい頃は友達ができますように、勉強ができますように、剣術が上手くなりますように、とか?」

    「それは努力すれば出来ることじゃん。」

    「平助君って、意外とこういうところでは理性的なんだね。」

    「あ、ご...ごめん。そんなつもりじゃなくって...また、思ったまま吐いちゃった。わりぃ」

    「ううん、平助君が何を考えてるか知るのは好きだよ。とにかく...大きくなってからは、お父さんの健康..とか...京に着いたらお父さんが見つかりますように...とか...そして去年は...。」

    「...去年は?」

    一つずつ願い事を指折り数えていた千鶴は、昨年の番になると逡巡した。
    平助が尋ねると、千鶴は首を横に振って曖昧に答えた。

    「うーん...秘密。でも、最近はうまくいかなかったから、もうお願いをしないつもりだったんだけど...」

    言葉を濁す千鶴の顔には悲しみがにじんでいた。 そんな千鶴を見つめる平助も何も言わなかった。じっと千鶴を見つめていた平助が筆を動かした。

    [ずっと笑顔でいてほしい]


    平助が書いた願いを見た千鶴の視界が少し曇った。千鶴が無反応で静かになると、平助はつつましく尋ねた。

    「...おかしいか?」

    「ううん、... 平助君はバカ。私、今も...笑って...いるのに...」

    「...そうだね。おまえは強いから。」

    濡れた声で笑いながら答える千鶴の顔を見て、平助は静かに目尻の涙を拭いてあげた。千鶴はじっとその優しい手に寄り添っていた。少し落ち着いた千鶴も筆を手に取った。



    [ずっと笑顔を返せますように。]


    千鶴の短冊を見た平助は申し訳なさそうな顔をしていた。本当は泣きたかったが、申し訳ない気持ちの方が強くて涙が出なかった。そんな平助の手を握りながら、千鶴は尋ねた。

    「どうして何も言わないの?」

    「...それは...オレがこんな...」

    「...こんな体とは言わないで。前にも平助君が言ったでしょ。 こんな体だから、今こうして私と一緒にいられるんだって。 そして今、里の水で少しづつ治している。 そしてさっきも言ったでしょ。 私が望むことは努力して叶えてくれるって。」

    「...そうだ、ああ! そうだ!」

    「それでいいの。治るってのは、心構えが一番大事だよ。」

    さすが蘭方医の娘。前にも似た事を聞いたことがあるような気がした。

    「...うん。オレ、これから本当に心を固めるから、信じてくれ。」

    「うん!じゃあ、そろそろ短冊を掛けて帰りましょう。これ以上遅れると、山道を登るのが大変だから。」

    「そうしよう。その代わり、山では絶対に!オレが荷物を持つ! それは譲れないからな。」

    「あはは、じゃあ言葉に甘えて。」

    平助のしつこい主張に、千鶴はついに降参した。

    平助は荷物を、千鶴は少しずつ夜目がなくなり始めた平助のために提灯を持ち上げた。 二人は残りの手をつないで一緒に山道を登っていった。短冊のことだけど、笹に掛けるのではなく、お守りとして持ってくるべきだったかな? 山道に入ったところで思い出したように、千鶴は言った。

    「あれは飾って燃えてこそ意味があるもんじゃねぇか?」

    「でも、平助君が叶えてくれるでしょう?」

    「しっかり刻んでおいたからぜって忘れねえ。 必ず...叶えてあげる。」



    昨年の七夕の前夜...御陵衛士藤堂平助は今とは違い、人混みの中を一人で歩いていた。

    そういえば、ここはよく巡察してた所だ。

    半年前までは八番隊の隊員たちと、時には千鶴と一緒に歩いていた街が、今は見知らぬ寂しく感じだった。その時、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。周りを見ると、佐之助と千鶴の姿が見えた。この近くに十番隊の隊員も巡察しているのだろうと思った。平助は建物の間に身を隠し、佐之助と千鶴の姿を見守った。 二人は春に新撰組を出たときと変わらない様子だった。変わったのは平助だけという様に。佐之助は千鶴に何かを渡し、千鶴は感謝の気持ちを込めて頭を下げた。明日は七夕なので、千鶴に短冊を渡したのだろう。

    今年も同じもん願うのか...?

    父が見つかりますように。千鶴が毎年書いていた願いだった。結局、父を見つけるのを最後まで手伝うことができず、新撰組を離れることになった。自分で口にした約束を何一つも守れなかったという罪悪感にさいなまれ、哀れな地面を蹴るだけだった。 そうしているうちに、左之助と千鶴の姿はどんどん小さくなり、消えてしまった。

    熱心に見かけていた千鶴の後ろ姿が見えなくなってから、どれだけの時間が経ったのだろう。平助は、千鶴が泊まっていた竹の前に行った。吹き荒れる風に多くの願いが飛び散るが、平助には千鶴の願いだけがはっきりと見えた。


    [ 平助君が元気で、無事でありますように]



    それは千鶴の願いではなく、そう思ってほしいと願った自分の願いではないだろうか。

    平助は千鶴の短冊を掴んだ。これはうつつで決して夢ではなかった。千鶴の筆跡で書かれた自分の名前を見ながら、平助は少し泣きたくなった。 その一方で、

    オレのために書いてくれたんだから、お守りにしてもらっても良いか?

    しかし、短冊は燃やして天の川に送るべきだと言うのだが...。しばらく悩んだ平助は、結局、千鶴の短冊を持ってその場を立ち去った。翌日、ひょっとしたら短冊を燃やせる前に千鶴が再び現れるかもしれないと思い、同じ場所で待っていたが、今日は巡察に出られなかったようだった。

    どうせ現れても話しかけることも、目の前に出ることもできなかっただろう。

    その日以来、平助は疲れた時や辛い時は、短冊を思い出して元気を出した。結局、油小路事件で御陵衛士を、歴史の表舞台から降ろされることになり、千鶴の心が込めた短冊は失われてしまった。羅刹になった以來考えが多くなる日は、あの日のことを思い出した。もしあの時、オレが千鶴の短冊を持ってきていなかったら、千鶴の願いが天の川に届いていたら、自分は今、羅刹ではなく普通の人間として、千鶴のそばに立っていたのだろうか、と。

    またそのことを思い出した平助は、すぐに首を縦に振った。もうこんなことは考えないと約束したのだから。 多分、自分は千鶴を守るために、遅かれ早かれこうなってしまったのだろうとも思った。

    千鶴の言葉通り、どんどん良くなっているから。
    そして、いつも千鶴がそばにいてくれるから。

    平助は気を取り直して、千鶴と握った手に力を込めて握った。そんな平助に応えるように、千鶴も手に少し力を込めた。


    笹の木に飾った短冊は天の川へ。
    今度こそ叶うだろう。
    そうすると、千鶴と約束したから。
    一人で願って秘める必要のない、
    二人で一緒に叶う願。
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    叶うコト蝉の鳴き声とともに、平助と千鶴の雪村の里での日々が始まった。山奥に位置し、人の往来がないため、幸か不幸か雪村の里は、千鶴が里を去った日と大差なかった。里の人々の平穏を祈った二人の平穏は簡単ではなかった。暑さと日差しは木の下で避けられたが、いつまでも野宿をするわけにはいかなかった。しかし、里にはまともな家と呼べるものが残っていなかった。それで二人は家を建てることにした。初は失敗もあったが、いつの間にか自分たちなりのコツを捕まえて、どんどん家らしい家を建てていた。

    この物語は「雪村の里」に住む二人の慶応4年夏の物語。

    かんかん。

    薄日にも音があれば、蝉の鳴き声と競合していると感じるほど鋭く降り注いでいた。まだ羅刹の気質が強い平助のために、町へ降りるのはいつも午後になってからだった。夕暮れ時に到着した街の雰囲気はいつもと違っていて、いつもより早く閉店している店もあれば、これから始まるような店もあった。何よりも人々が多かった。
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