可愛 かわいいです、と言った、その声。
愛おしい美しいものを手の中に優しく閉じ込めて、そっと囁くように言う声。
野菜を切っている手を止め、思わず彼のほうを向くと、さらりと彼の手は私のまとめきれていない横髪を掬い、撫でていった。
彼の手はいつでも優しく、私を壊れもののように、とまではいかないが、それでも、まるで小さな花に触れるかのように慎重に、丁寧に扱う。
こんな風に人に扱われるのは数百年ぶりなんだ。本当に。私は神ではあったけど、崇拝されてはいなかった。誰も私を知らなかった、特に最近の生まれの人間は、古書のどこかにがらくた神という記述を見つけて、眉を顰めるだけだろう。
その私に、彼は出会った時からこうだ。種明かしをされてからは、理解と共にやはり、不思議が優った。そして今は、言いようのない安堵と、胸の高鳴りが生まれる。
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