ルチルの受難「どうしてこうなった…?」
突きつけられた姿見に写ったとんでもない自身の姿に俺はしばらく固まっていた。
それはいつもと変わらないはずの穏やかな昼下がりだった
そう、変わらないはずだった
「なんだこれ……?」
書庫の掃除をしているときに見つけた見知らぬ小さな箱。
手のひらに入るほどの小さな箱で振ってみても何の音もしなかった。
「……アイリスの、かな?」
とりあえず見せてみるかと箱を持ち直そうとすると指が当たりコロリと床に転がってしまった。
「うわっ!!?!」
しまったと屈んで手を伸ばしたその瞬間、箱が開きすごい量の白い煙が吹き出し目の前が真っ白になった。
「ルチル!!」
バタンと開け放たれる扉の音が耳に響く。
「何この煙!」
アイリスの放つ魔法の気配が通りすぎるとようやく視界がクリアになった。何だか,体が苦しい,特に胸の辺りが……
「ルチル!怪我はな…………へっ?!」
振り返りアイリスを見上げればこっちを見たまま目を丸くして硬直しているアイリスの姿。
「アイリス、助かったよ」
自身の声、何か高い気が……
「る、る,ルチル!?な、な、なんで!なんで!」
「?」
「何で女の子になってるのよォォォ!!!」
「へ……???」
「しかもロリに巨乳とか!情報量多すぎぃぃ!!」
走り去るアイリス,一人残される俺。恐る恐る、自分の体を見下ろせばそこには胸当てに押しつぶされて窮屈そうにしている膨らみが二つ。
「………………」
スゥーっと血の気が引いていく。ごくっと息を呑んで恐る恐る手を伸ばす。
「な……い……」
凄まじい絶望的衝撃が体を突き抜けていった。
「ルチル!」
戻ってきたアイリスはその手に自分の姿見を持っていて突きつけてくる。そこに映ったのは少し長くなった癖っ毛の主張が激しいお胸がついた随分小柄になった自分の姿だった。
「………………」
頬をつねってもただ痛いだけで何も変わらず、理解する度に逆に真っ白になっていく脳裏。プツンと何かが弾けた。
「ルチル!!!」
アイリスの悲鳴を最後に俺の記憶は完全に途切れ落ちた。