夜の帳の外し方いつからだろうか。
夜というものが恐ろしくなったのは。
戦場では、夜というものは恐怖の象徴でしかない。
いつ何時、うたた寝をしている目の前に、自らの死を継げる爆弾が投げ込まれるかわからないからだ。
寝ている時に一思いに死ねたらまだ幾分幸せだろう。
直前に起き、恐怖のうちに炎に包まれ、生き残ってしまったものは、いっそ殺してくれと泣きわめく。
ただれた肌で、水がほしいと天を掻き、ろくに見えぬ目から膿とも涙ともつかぬものを流して、苦しむ。
寝て起きてそのようなものが居ないことを、願う事しかできないのだ。
いくら上級軍人と言えど、前線で指揮をとる以上、安全な場所なんてものはない。
無論、前線の防空壕の中で、交代で見張る者たちよりは安全ではあるのだけれど。
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