指輪「ボクと結婚、してください」
すう、と美しい仕草で差し出された両手の中に収まっていたのはきらきらと金に輝く、指輪。
「……あ?」
思わず口からこぼれた間抜けな声。指に引っ掛かけた空のジョッキがぶらりと揺れる。
久しぶりに街まで行った買い出しの帰り。どうせルーラで飛べるから、と都会でしか買えない高めの酒も買い込んで、二人で酒盛りなどを始めたのが夕飯の後。
そこそこ酒も回りきって、とりとめもないくだらない話をして二人で笑い転げて、机に突っ伏して笑いを堪えているのかと思ったイレブンがふいに神妙な顔をして取り出したのだ。指輪を。
「……なんちゃって!」
吹き出すイレブンは、まださっきの笑いの余韻を引きずっているのか目の端に多少の涙を浮かべたままだった。
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