【教令院関係者多数!スメールシティ恋の祭典♡1対1で初心者にもオススメ♡】☆パーティー内容☆
「気の合うお相手と出逢いたい…」
「研究が恋人とからかわれた…」
「夢じゃなくて現実で恋人が欲しい…」
そんな貴方をサングマハベイ商会が精一杯サポートいたします!
会場は大人気のプスパカフェ!
貸切のプレミアムな空間で、周りを気にせずゆっくりお話をしていただくことができます。
♡パーティーではテーブルごとに間仕切りを設けますので、1対1での交流となります。
♡お時間は1人15分。スタッフが時間管理を行い、時間になりましたら席替えのご案内をしますので、安心して会話に集中していただけます。
♡フリータイムはありませんので、初心者の方や自分から話しかけるのが苦手な方にも効率よく交流いただけます。
♡一通りの交流が終了したあと、カードに気になった相手の番号とコメントを記入。スタッフが回収し、マッチングした場合はその旨をご本人のみにお伝えします。全体での発表はありませんのでご安心ください!
♡男女各10名募集!参加費は男性5,000モラ、女性1,000モラです。お申し込みはサングマハベイ商会の従業員もしくは営業所まで。
※参加者一例:教令官、学生等(建築デザイナーなんかも来るカモ!?)
企画・運営:サングマハベイ商会
後援:教令院
◇
「こんにちは。11番のアルハイゼンだ。こういう場所は初めてだが、誠心誠意努めたいと思っているのでよろしく」
(どういうことだってばよ)
セノは稲妻からもたらされた、某忍者漫画にドはまりしていた。主人公の生き様がとてもかっこいい。
…現実逃避している場合ではない。目下、リスク最低と評価されていた案件は、意外性№1書記官の闖入によって混沌を極めようとしていた。
◇
ことの発端は、部下からの相談であった。
「婚活パーティに潜入?」
渡されたチラシに目を通すセノを見詰めながら、新人のマリクは力説した。
「そうなんです!もうこれしか方法が見当たらなくて…。ターゲットは毎日、研究室と家の往復しかしておらず、交友関係も薄いようで研究以外では他人と交流すらしない状況です。それで膠着状態が続いていましたが先日、そちらの婚活パーティに参加するとの情報を得ました。潜入して、少しでも情報を引き出せたらと考えています!」
「事情は承知した。ところで潜入役は誰を想定している?ターゲットが男性である以上、女性に協力を仰がなければ。今、手が空いているのはショ———」
「セノ様!お願いできますか!!!」
「レ?なんだと?」
マリクの返答にセノは勢いよく顔を上げた。大マハマトラに復帰して以降、働きづめであまり休めていなかったので幻聴でも聞こえたのだろうか。今日は少しでも早く帰ってすぐ寝よう。
疲労感に目頭を揉む上司を前にして、新人の部下は興奮気味に言い募った。
「ターゲットを観察していたところ、彼はどうやら砂漠出身の女性が気になっているようです!日々観察していたので視線で分かりました!しかしマハマトラの女性で該当する方は居ませんし、外部に協力を求めるのも危険です!なのでセノ様にご助力いただけませんでしょうか?!あ、変装のことなら大丈夫です!ショーレ先輩に頼んでおきましたから!!」
「待て」
判断が早すぎないか?
スメールを震撼させた、かの創神計画を踏まえ、セノは部下達とりわけ新人の自主性を涵養する教育方針に舵を切った。いつ同様の事案が発生し、上席が突如不在になっても、適切な取り回しができるようになっておく必要性を強く感じたからである。
そこで、部下達には案件の難易度に応じて主担当を宛がい、ある程度の権限を持たせて任せることにしたのである。もちろん、大マハマトラの力が必要になった場合の手助けは惜しまない。
部下たちもセノの意向を汲み取り、同僚達と切磋琢磨しながら日々の業務をこなしていた、そんな矢先の出来事であった。
(方針のどこに問題があった?洗い出してすぐさま修正しなければ…)
「セノ様、お待たせしました!」
バーン!と勢いよく開いた扉に思考を中断され目を向けると、そこにはメイクボックスを抱えたショーレが、興奮もあらわに仁王立ちしていた。
「扉は静かに開けろ」「ショーレ先輩!待ってました!セノ様には説明しておきましたから、早速お願いします!」「がってん承知!」「待て待て待て待て」
展開も早すぎる!
「セノ様!パーティは今日なんです!申し込みは滑り込みでできたので大丈夫です!」
「セノ様!メイクという魔法には時間がかかります!さあこちらに座ってください!まずはスキンケアからですよ!…えっ、すご、肌キレイすぎ…睡眠時間あまり取られていないのになぜ…雷元素による活性化でお肌のターンオーバーが促進された…?セノ様はキノコンだった…?」
「…そのジョークはおもしろくないぞ」
(((セノ先輩に言われたくないな…)))
他の部下達が遠巻きに見守る中、腹を括ったセノは愛されメイクを施されていったのである。
そして小一時間後…
「おお~」「…可憐だ」「うわっ…うちの上司、可愛すぎ…?」「ワッ…」「写真撮っていいですか?」「性癖が狂う」
誰もが振り返るスメール美女が爆誕したのである。
白銀の髪は毛先がふんわり内側にカールされ、控えめで上品な印象を与えており、いつも右目を覆っている前髪も横に流され、ローズカットされたサングイトがはめ込まれたピンで留められている。
メイクは元来の素材の良さを生かすために最低限でありながら、長いまつげは綺麗にカールされており、小ぶりな唇にはベージュピンクのリップにグロスが華やかさを添える。
いつもは半裸の戦装束も、今は白地の布に砂漠の伝統的な刺繡が施されたワンピースを着用しており、変声機を隠すためにフリルのチョーカーを付けている。
この姿を見て、どうして大マハマトラと気づくことができるだろうか、いやない。
「セノ様のお顔は圧…被り物のお陰であまり認知されてませんが、念のため軽めの認識阻害の錬金薬をスプレーしておきますね。ついでにスメールローズの香りも添加しておいたので香水代わりにもなりますよ」
セノは言われるがままに顔面にスプレーを浴びた。立ち昇るスメールローズの香りにもうどうにでもなれという気分であった。だが、これでもれっきとした任務である。支度中にマリクから受けた作戦を反芻する。
ターゲットは妙論派のバクラという学者である。彼は基本的には温厚で丁寧な言葉遣いの青年であったが、時折り人が変わったように粗暴な態度をとることがあった。また、噂の域を出ていないが人形に傾倒し何かを企てているのではないかとのタレコミもあり、これまでに実害は出ていないが、要注意人物として警戒している最中であった。
今回のミッションはバクラと交流を持つきっかけを作ること。さらに突っ込んで言えば、仲良くなっておうちデートにこぎつけよう☆ということらしかった。
時間があれば一緒に計画の精査をしてあげられたのだが。セノは報連相の重要性を極めて強く感じたが覆水盆に返らず、作戦はスタートダッシュを華麗にキメたところである。知恵の殿堂にマネジメントの書籍はあっただろうか。この任務が終わったら探しに行こう。
そういうことでセノは女性側の参加者として、慣れないヒールサンダルをかぽかぽ鳴らしながらプスパカフェに飛び込んだのである。
◇
「どうした、調子でも悪いのか」
「…っ、失礼しました。私は10番のイシズです」
(回想に耽っている場合ではない。この男をどうにか秤…やり過ごさないと。錬金薬を塗布しておいて良かった。ショーレの査定アップだな。アルハイゼンとは創神計画以降さほど交流が無かったが万が一ということもある。しかしなんでこいつはこんなところに居るんだ)
あんまりの事態に思考がまとまらないなか、改めて目の前の男へと視線を向ける。相変わらず尊大な態度を隠そうともしていないが、その大きな手に書籍は掲げられておらず、その特徴的な虹彩を持つ瞳はセノもといイシズ嬢をじっと見詰めている。お前は場をわきまえるタイプじゃないだろう。俺のことはいいから15分間本を読め。
そこでふと気づいた。アルハイゼンは11番と言ったが、定員は男女各10名のはず。
「あの、アルハイゼンさん、」
「何か」
「(食い気味に来るなこいつ…)今回のパーティは定員が10名だったはずなので、番号が少し気になりまして」
「ああ、君がこの会場に入っていくのを見かけて追いかけた結果こうなった」
「ぇ°」
追 い か け て き た だ と ? ? ?
セノは一瞬気が遠くなりかけたが、どこからともなく聞こえてきた「何で10番の僕を差し置いて奴がテーブルに着いてるんだ!?」という若い男の声に、何とか意識を保つことに成功したのである。
(こいつナチュラルメイクフェミニン系砂漠女子が好みだったのか?確かにシティではそのような女性は見かけたことが無かったが…。くそっ、ティナリ!話したいことがあるんだ!すぐ来てくれ!)
ガンダルヴァー村のレンジャー長は持ち前のカンで爆笑の気配を察知したが、目の前で弟子が調合鍋を爆発させたため、嵐を呼ぶ報告会は後日に持ち越しとなったのである。閑話休題。
「そう、なんですね。光栄です。短い時間ですが色々お話ししましょう」
今回は100%ご破算になってしまうため多少は心が痛むが、いつか邂逅するであろうナチュラルメイクフェミニン系砂漠女子のため、練習台として付き合ってやる。セノは優しい男であった。
相変わらず熱視線で見つめてくるアルハイゼンに、ショーレから教わった婚活術で質問をぶつける。無難な話題から会話を広げるのだ。
「ご趣味は?」
「読書だ。君は」
頭の中のショーレが腕で大きくバツを作って警告してくる。七星召喚はセノ様の独壇場になってしまうからだめですよ!誠に遺憾である。
「私も本はけっこう読みます。あとはカードゲームを少々」
「なるほど、カードゲームは何を?」
読書ではなくそちらに関心を示すのか!?
「…七星召喚を嗜んでおります」
セノは殊に好きなことについては嘘がつけないタイプであった。ショーレすまない…決闘者魂にはあがなえない…!
「七星召喚か。俺は興味が無いが、君のことを更に知る機会ができるのであれば是非始めたい。教えて貰えるだろうか」
「っ…!」
あのアルハイゼンが?「君は七星召喚をやるのか?俺はやらないが」とでも言いそうな教令院の気狂いが?!
セノの決闘者魂は表出する寸前であった。スメールの有事に際して彼の行動には舌を巻くことが多かった。あの優秀な頭脳は七星召喚でも存分に生かされるであろう。
(決闘したい)
机の下で拳を握りしめる。この時のセノの握力は、ヒルチャールの王を余裕で超える記録を叩き出した。
「は~い、お時間になりましたので男性はお席の移動をお願いしますわ~!さあさあ、早くご移動いただかないと延長料金を頂戴しますわよ~~~!」
運営の特徴的な声に冷や水を浴びせられたかのように、セノの思考は冷静さを取り戻していく。
(危なかった…もう少しでデッキを出すところだった。だが覚えていろアルハイゼン、最愛の女性を失ったお前の心の穴を七星召喚で埋めてやるからな明日にでもすぐさま!)
「移動ですって、15分って短いですね。ありがとうございました」
「移動?断るが」
「え?」
(え?)
断られた。断れるのか。断られては困る。ターゲットにこのテーブルまで来てもらわないと意味がないのだ。なぜこんな恰好までしてここに座っていると思っているんだ。ふんぞり返ってないで速やかに移動しろ!
セノは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の書記官を除かなければならぬと決意したが今は非力で淑やかなイシズ嬢なので、その大きな目に困惑の色を浮かべる振りをしながら運営の助力を待つしかなかった。
「あら~、お客様困りますわ!このパーティは席替え制ですのよ!ほら、他のお客様もお待ちになっておりますから。ささっ、早くご移動を」
「俺はこの人以外に興味はない。これでどうだ」
「うふふふふふ、こちらのテーブルは席替えの必要はありませんわね!ご成婚の暁には式場の手配から新居の建設、家財の購入まで、このサングマハベイ商会にお任せくださいまし!ではごゆっくり~!」
まさに急転直下。高速手のひら返し。アルハイゼンからずっしりと重たそうなモラ袋を早業で受け取ったドリーはそう嘯いて去っていった。
大マハマトラの目の前でいとも容易く行われる買収行為にセノの堪忍袋は元素爆発寸前であった。
(1対1での交流を約束して金を払わせているのに契約不履行では。詐欺の現行犯で牢屋にぶち込めないかこいつら)
本来の任務と目先の不正行為を天秤にかける。ふとマリクの、期待に目を輝かせる顔が思い浮かんだ。そうだ、ここで騒ぎを起こすことは避けなければならない。上司として、部下に恥ずかしい姿を晒すわけにはいかないのである。既に女装姿を見られているが。
「この通り、金はある」
(よし現行犯だ)
金持ちアピは諸刃の剣。清廉潔白・忠勇義烈な大マハマトラに3高(高身長・高収入・高学歴)ステータスは通じないのである。脳裏のマリクの顔がしゅんとしているが、男にはやらねばならぬ時がある。今は女の姿だが。
セノが御用改めを高らかに宣言しようとした矢先、馴染みの暝彩鳥が窓を横切るのが目に入った。
「!すみません、少し席を外します」
「何故。何か失礼があっただろうか」
射るような視線を寄越してくるアルハイゼンから目を逸らしながら、セノはもっともらしい理由を探す。というか今のところ失礼しかないが。
「いえ、ちょっとお手洗いに…」
「不躾な質問をしてしまってすまない。だが、早めに戻ってきてくれると嬉しい。なるべく長い時間、君と話したいと思っている」
◇
(…あそこまで言われて落ちない女性は居ないだろうな)
人目を忍んで暝彩鳥から受け取った紙片を開きながら、セノはため息を吐いた。
悲しいかな、熱烈な口説きをかましている相手は女装した大マハマトラである。全くの悲劇。ズバイルシアターの演目にできるだろうか。…ニィロウが俺の役を演じるのか。やめておこう。
(なに?ターゲットはシロ…。外で状況が動いたか。ここにいる必要はもうないな)
緊急の連絡はマリクからであった。そういうことなら早めに消えた方がお互いの為である。あの熱視線に晒され続けたら自分がどうなってしまうか分からないなんてことはない。決して。
「あらら?どうなさいましたの?将来の旦那様が首をなが~くしてお待ちですわよ」
商機を逃さないドリーは本当に良いタイミングで現れる。ここぞとばかりに先ほどより重いモラ袋を抱えさせて頼む。
「少し事情がありまして、ここで帰らせてください。お相手の方には急な体調不良で帰ったとでもお伝えくだされば…」
「あらま!そうなんですの?それなら仕方ありませんわね。この私が責任をもってお伝えしますわ!でも一言くらいメッセージがあっても良いのではありませんこと?ちょうどここにカードがありますからちゃちゃっと書いちゃってくださいまし!」
一方的に騙している罪悪感もあって、セノはペンを執った。途中で退席する詫びと相手の幸せを願う言葉をカードに書き連ねドリーに託し、この場を去ったのである。
「良さげな雰囲気だったのに勿体ないですわね。まあいいですわ。他のお客様のマッチング率を上げてモラを稼ぎますわよ~!」
◇
ことの顛末としてはあっけないものであった。バクラの家に泥棒が入ったことに気づいた近隣住民が三十人団に通報、偶然近くに居たマハマトラと共に泥棒をお縄につけた際に部屋の中を目撃したのである。
魂の容れ物ではないかと警戒していた人形は、稲妻で超人気ヒナさんの等身大フィギュアであったし、バクラの二面性も召喚王に登場するキャラクターに憧れて真似をしていただけだと後に判明した。
こうして一連の騒動は幕を閉じた…はずが、翌日、セノは執務室でアルハイゼンの電撃訪問を受けていた。
「体調は回復したのか?はいこれ」
「…?なんだ…カード…?」
《10番、セノさんへ。ワンピース姿も似合っていましたが、普段の私服姿も見たいと思っています》
「君からのカードはきちんと受け取っているから安心してくれ。ところで式場はどこにする。モラなら有り余っているからアルカサルザライパレスでも良いが」
「おっ、お前!分かってたのか!!!!!!」
【教令院関係者多数!スメールシティ恋の祭典♡1対1で初心者にもオススメ♡】
マッチング成立:1組
あまりのマッチング率の低さに商機を見出せなかったため、商会主催の婚活パーティーはこれ以降行われることはなかった。
おしまい