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    のわーる

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    のわーる

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    とまっっっさんより借りているネタの進捗です。色んな人が書いてるけど俺は俺で見たいものを書きます。
    とんでもない書き方してるので読みたい人は解読頑張ってください。

    秘境捕らわれ🌳ネタ(※アハキィ前提)(導入)
    (冒険者協会の依頼で新たに現れた秘境に調査に入ったニチが戻ってこなくて、そうしてるうちに秘境の入り口がアビスに侵食されちゃって耐性のない人は入れないから旅人に依頼が来たとかそんな感じ。旅人は一時的にスメールに行ってたからちょっと遅くなった)(なぜこんな設定を突然入れ込むのかって?オマケで誕生日の話を入れたいなとふと思って旅人が花神誕祭から戻ってきたあとの時空だとちょうどいいからだよ)(ほんとにオマケ書くか分からんけど)
    「旅人さん!良かった、もう少しで誰かに探しに行ってもらうところでした。」

    キャサリンの少し焦りを含んだ声が耳に届く。彼女がスネージナヤ製のバイオニック人形だと知ってから、その人形らしからぬ感情表現にはいつも感心してしまう。

    「ようキャサリン!どうしたんだ?緊急の依頼か?」
    「そうなんです。キィニチさんとはお知り合いでしたよね?」

    異郷の旅人こと俺と、その最高の仲間パイモンは、いつものように依頼を受けようと冒険者協会を訪れた。ここ数日は花神誕祭に参加しており、スメールの協会を訪れていたから、ここに来るのは久しぶりなのだけれど。

    「おう!オイラたちはあいつの友達だぞ!あいつがどうかしたのか?」
    「実はキィニチさんが調査に入った秘境から戻ってきていないんです。そこで、旅人さんに状況確認と必要ならば彼の救出をお願いしたく思っています。」
    「分かった、受けるよ。詳細は?」

    実のところ、キィニチが秘境の調査に行くということは聞いていた。危険度が分からないため、もしもの時は頼む、とも。これは俺たちがナタに戻って来るのを少し早めた理由の一つでもある。
    キィニチから聞いた話である程度把握はしているものの、協会にも説明責任があるだろうし、情報が更新されているかもしれない。ひとまず、続きを促す。

    「ありがとうございます!こちらが地図です。この秘境は1週間ほど前に突如発生したもので、元々は別の冒険者の方に調査を依頼していました。しかし、その方々は秘境に入ったまま戻ってきませんでした…。協会は、その方々の生存は絶望的だろうと見ています。その後、ナタでも有数の実力を持ったキィニチさんに依頼が行きました。秘境に入ったのが3日前になります。」
    「3日!?めちゃくちゃ時間が経ってるじゃないか!」
    「はい…実は、キィニチさんが秘境に入った暫く後、その秘境の入口付近にアビスの境門が発生し、その対処に時間がかかってしまったのです。境門を片付けられたは良いものの、入口がアビスに汚染されてしまい、耐性のない人では近付けない状態になりました。そこで、耐性のある旅人さんにしか頼めないだろうという話になったのです。」
    「なるほど…確かに旅人なら、アビスを浄化できるし、適任だな!」
    「未だ、この秘境からの生還者がいないため、中の詳細は一切不明となっています。協会は貴方達が戻って来なければ、調査を中止し、この秘境を半永久的に立入禁止にするでしょう…それほど危険な依頼です。本当に、よろしいのですね?」
    「うん。対処できる人は俺しかいないみたいだし、何より友達のためだしね。」
    「分かりました。その分報酬は弾みますので、安心してくださいね!」
    「じゃあ帰ったら美味しいものがいーっぱい食べられるな!」
    「食べ過ぎてお腹を壊さないようにね。」

    そんな軽口を叩きながらキャサリンと別れ、早速秘境に行くための準備に取り掛かるのだった。

    その数時間後。俺たちは件の秘境の入口に到着していた。

    「うーん、アビスのせいで真っ黒なだけで、他に変なところはないぞ…」
    「そうだね……まあ、この辺りは既に調査されてるだろうし、入ってみるしかないかな。」
    「うぅ…本当に大丈夫かな…」
    「じゃあ、パイモンはここで待ってる?」
    「それは嫌だ!一緒に行くぞ!オイラはお前から離れられないんだからな!」

    そう言いながら笑った相棒に微笑み返し、2人で改めてバッグの中を確認することにした。

    「忘れ物は…うん、ないね。」
    「持ち過ぎなんじゃないのか…?相変わらずどこにそんな入ってるのか分からないぞ…」
    「単純に出るのに3日以上かかる条件の秘境かもしれないからね。食料とか携帯式の鍋とか、必要でしょ?」

    そう言いながら仙人探しの美食家を取り出す。パイモンはまあ食事は大切だからな!と言いながら、自分の荷物を仕舞っていく。

    「よし、準備できたな!」
    「うん、行こう。」

    扉に触れるといつものように水色ではなく、紫色に発光する。一度パイモンと顔を見合わせ互いに頷いた後、意を決して扉を潜った。

    その先で待ち構えていたのは、木造の手狭な小部屋だった。懸木の民などで見かける建築様式に非常に似ていて、そこには複数の人影があった。人影、と表現すると本物の人がいるように思われるかもしれないが、言葉そのまま、影がいるのだ。人の形を黒く塗りつぶしたようなぼやけた影は、多くの子供と一人の男性を形作っている。少年少女の影は男性の影を円状に囲むように座っていた。
    予想外の光景に拍子抜けしてしまうが、ここが危険な秘境だと言うことを思い出し、気を引き締め直す。辺りを見渡すが、特にギミックらしいものも見当たらず、めぼしいものと言えば一つだけある扉くらいだ。近付こうとする前にその扉は開き、一人の男の子の影が入ってきた。他の影たちがぼやけているのに比べ、その少年はハッキリしており見た目の詳細が分かる。その服装は非常に粗末なもので、荒い作りの麻の服に獣の皮でできた腰布を履き、額にはボロボロの布を巻いていた。裸足のまま歩いて来た彼は、円の外に座る。子供たちは口々に彼に質問をしたりからかったりするが、男性が咳払いでそれを止めた。どうやら授業が始まるらしい。
    俺とパイモンはどうしたらいいのやら分からず、顔を見合わせる。そうしている間に、まるで俺たちなど存在しないかのように教師らしき男性は話し出した。
    授業の内容は、ナタの英雄についてのもの。子供たちは憧れに満ちた顔で英雄の名を挙げ、教師は英雄たちの尊き精神を讃える。しかし、円の外に座る彼だけはそれを理解できなかったようで、手を挙げ疑問を口にする。それに対する教師の答えにも納得できなかったらしく、こう口走る。

    「もし俺が英雄になったら、報酬にモラが欲しい。」

    子供たちはその言葉を笑い、罵り、彼を追い出そうとする。
    いじめの現場に胸が痛むより先に、彼の言動が頭にこびりついて離れなくなる。今、まさに探しているその友人に、少年の影が重なった。

    「キィニチ…?」

    顔を覗き確かめようとするも、彼は他の子どもに追い出されるままに部屋を出てしまう。追いかけようにも、扉の外は何もない暗闇になっている上、透明な壁のようなものに阻まれた。

    「旅人!気を付けろ!」

    パイモンの声にハッとし振り返れば、先ほどまで子どもの形をしていた影が集まり、複数の懸木の民の戦士を形取っていた。

    「ッ…!アビスか!」

    (WEBイベより子育て、見聞より山の王との対峙、キャラストより神の目エピ、キャラスト2,3より学校、キャラスト4よりリックと勉強、エピソード動画より竜を狩らない竜狩り、チュートリアル動画より人助け、
    キャラスト1 畑仕事や狩り、両親の諍い、キャンディと花、母がいなくなった日、7歳の誕生日
    捏造 ママの絵本読み聞かせ)


    (幼ニチを再現したものを見た🌤️&🥧)
    (性癖にしか従ってないから入れるか分からん)
    キィニチ?いや…違う、これは残影だ。アビスの力によって作り出された、昔日の影。それらがキィニチの姿形を取り、彼の歴史を再現している。

    ザシュッ

    「ひっ!?た、たびびと…?」

    幼いキィニチを模したアビスは、自身が斬られたと理解した瞬間、その顔で苦痛を感じているような表情を浮かべた後、姿を保てなくなり崩れた。はらはらと消えて行くアビスを冷たい瞳で見下ろしながら、付着した血を払い落とすように虚空に向かって剣を振る。

    「パイモン、これはキィニチじゃない。彼を猿真似しただけの、偽物だよ」


    (黒目ニチと会うところ)
    ギミックを解除しスイッチを押すと、扉が開く。次はどんな幻影が待ち構えているのだろうかと、気を引き締めながら扉を潜った。
    その部屋は、今までとは打って変わって何もない殺風景な空間だった。床や壁の材質は廊下と同じ物で、いかにも秘境と言った感じのだだっ広い広間になっていた。そして、その空間にはまたしてもキィニチの影が――いや、キィニチがいた。

    「キィニチ!良かった、無事だったんだな!」
    「ッ!パイモン、待って!」

    彼の元に飛んで行くパイモンの背を追う。確かに、このキィニチは今までの影と比べ色鮮やかで、不自然にブレたり解像度が低かったりもしない。しかし、どうにも様子がおかしい。此方が来ていることに気付かないはずがない距離にも関わらず、一切反応を示さずに目を閉じたまま突っ立っているのだ。

    「えっ…?」

    パイモンが俺の声に反応し振り返るのと、その大剣が振り下ろされるのはほぼ同時だった。辺りに大きな音が響く。

    「え?キ、キィニチ…?なんで…」

    キィニチが普段から愛用している大剣は、パイモンが飛んでいる場所のすぐ傍の床に深く突き刺さっていた。おそらく、軌道を逸らすのが間に合っていなければ直撃していただろう。パイモンは、自分を守った岩元素の歪な塊がパラパラと崩れるのを見ながら呆然としている。

    「出口まで下がって!」
    「っ!お、おう!」

    パイモンを下がらせている間、自分は相棒を背に守るように武器を構えた。彼は得物を床から抜き、ゆっくりと顔を上げる。その瞳には、あのファイアオパールを思わせる太陽はなく、ただ淀んだ闇のような深淵が広がっていた。

    次の瞬間、キィニチが視界から消える。頭で考えるより先に、上からの猛烈な殺意に反応して体が動いた。彼が愛用している大剣を片手剣で受け止めようとするが、重力と質量差で押されてしまう。このままではまずいと考え、足に岩元素の力を込め、そのまま地面を割り凹ませた。俺が一段下がったことでバランスを崩した隙に風元素で彼を吹き飛ばす。が、彼は草元素の鉤縄を巧みに扱い、すぐに体勢を立て直した。どうやら、空中に移動したカラクリはあれらしい。

    「キィニチ!俺だ、旅人だよ!」

    そう呼びかけても、彼がこちらの言葉を認識する様子は一切なく、変わらず斬り掛かってくる。

    「俺のことが分からない?それとも何かに操られてるの?」

    斬撃の雨をあしらいながら声を掛け続けるが、やはりその黒い瞳は此方を映しているようには思えない。段々と声を発する余裕も無くなり、なんとか身を守りながら思考する。

    おそらく、彼が本物のキィニチのはずだ。神の目の力が使えているのだから、少なくとも体は。しかし、明らかに様子がおかしい。此方の呼び掛けには一切応えず、命じられた機械人形のようにただ大剣を振り下ろしてくる。気になるのは、彼が常に身に着けている腕輪が見当たらないこと。あの腕輪は自称聖龍アハウとの契約で手に入れたもので、中にはアハウの本体が封じられていると聞いていた。契約に直結する大切な物を、彼が手放すことなどあるのだろうか。
    そしてもう一つの異常は、キィニチの戦闘力だ。彼はここまで強かっただろうか?元から大剣を片手で振り回せるほどの筋力があるのは知っていたが、今のような重さを感じさせないほどの動きができていたとは思えない。それに、素早さも格段に上がっている。彼は今、日頃は行使しているアハウの力を使っていないのだから、弱体化していて然るべきだ。なのにも関わらず、この戦闘力。この秘境の効果なのかもしれない。

    そうやって考えているうちに、死角から刃が迫る。躱しきれずに少し皮膚の表面を掠めた。それだけだと言うのに、明確に肉が抉られる感触を覚え、血が噴き出すのを感じる。

    「っ…たいなあ、はは、本当に俺のこと分かんないみたいだね」

    致命傷ではないが、考え事をしながら相手取れるほど甘くはないようだ。思考を切り替え、ひとまず目の前の彼をなんとかすることに集中する。此方から攻撃しようにも、彼は元素で編まれた鉤縄を自在に扱い、重力など関係ないかのように上下左右を移動して簡単に躱される。そして、此方が動きを追えなくなったところで隙を突いて大剣で攻撃してくる。今のところギリギリ対応はできているが、普段の戦闘スタイルとは全く違う、予想外な動きに翻弄される。闇のように黒く無機質な瞳に対して、その動きはまるで狩りをする獣のようだ。激しい動きをしているが、彼は息など全く上がっておらず、このまま戦い続けても戦況がこちらに傾くことがないのは明白だった。
    俺は勝ち目がないと判断しーー撤退を選択した。

    「渦よ!」

    水元素を打ち出し攻撃するも軽く躱されるが、本命はそちらではない。着地地点にばら撒かれた水を踏み彼が湿潤状態になった瞬間を狙い、雷元素で感電反応を起こす。

    「紫影!……風刃ッ!」

    動きを止めたほんの少しの隙を突き、風元素の力で彼を吹き飛ばした。そのまま反動で自分も後ろに下がる。彼は着地するまでもなく体勢を立て直し、鉤縄で距離を詰めようとする。が、それは想定内。

    「荒星!」

    岩元素の創造物で鉤縄のルートを阻害し、着地地点を逸らす。そうして稼いだ僅かな時間で、出口に向かって走り出す。速度で今のキィニチに勝ることはないと断言できるが、この部屋は出入り口が一つしかない。隙を突いて俺が先に出て、彼をここに閉じ込めてしまえば良いのだ。

    「パイモンッ!お願い!」
    「おう!」

    半ば転がり込むようにして部屋から出ると、待機していたパイモンが意図を汲みギミックを操作し扉を閉める。扉が閉まり切るという刹那、キィニチが得物を投げる。その大剣は扉が閉まらないよう隙間を作るーー

    「ッ風と共に去れ!」

    かに見えたが、風元素で竜巻を起こすことでなんとか逸らすことに成功した。完全に閉まった扉を見て、パイモンと共に安堵の溜息を吐く。

    「ま、間に合ったな…」

    パイモンがそう呟いた瞬間、扉の向こうから轟音が響いた。おそらく、彼が扉を壊そうとしている。慌てて岩元素の創造物と草元素のツル草で扉を補強し、パイモンに声を掛けながら走り出す。

    「パイモン、一旦逃げるよ!」
    「逃げるってどこに行くんだよ!秘境のクリア条件が分からないと、ここからは出られないだろ!?」
    「まだ行ってない部屋があったはず!そこでなんとかする方法を探すしかない!」
    「あのいかにもラスボスがいそうなでかい扉のことか!?むしろあそこの方があぶな…うわぁ!?」

    パイモンが言い終わらないうちに、一際大きな轟音と振動が秘境内に響く。扉が破壊されたのだろう。

    「見つかる前に急ぐよ!」


    (腕輪の部屋でアハウの解放に成功した後、部屋の入口壊して黒目ニチが入ってきたところ)
    数回の斬りつけるような音が響き、扉がヒビ割れていく。ついに崩壊した扉の瓦礫の向こうから、キィニチが姿を現した。すぐに襲い掛かって来るかと思ったが、黄色いドットの龍を見て、ピタリと動きが止まる。
    そんなキィニチの様子を、静かに眺めていたアハウが、唐突に口を開いた。

    「…何か、足りねぇな」
    「おい、アハウ?」

    パイモンの言葉など聞こえていないかのように、アハウはふよふよとキィニチの前まで移動し、彼に呼びかける。

    「おい、お前は我が従者、キィニチか?」
    「……」
    「そうなら返事をしろ」

    キィニチは応えない。ただ無機質な瞳でアハウを見つめる。

    「返事がねえってことは、違うってことで良いんだな?」

    そう言うと、アハウはドット状に崩れていく。そしてそのドット達は色を変え、質量を増し、やがて尊厳な龍を形取った。龍時代の遺物であり、往年の定めの領主。偉大なる聖龍クフル・アハウが顕現したのだ。

    「それなら、オレがお前に手を出しちゃならない理由はねえよなァ?」
    「そんな屁理屈が通じるのかよ!」

    舌舐めずりをしながら言う昔日の影に、パイモンが思わずツッコむ。が、返ってきたのは存外低い声。

    「その体にキィニチの意思が無いなら、アイツじゃないのと同じだ。今この瞬間は無効、オレは契約をそう解釈した。それだけだ」

    いつになく真剣なアハウに、思わずパイモンとともに息を呑んでしまったが、キィニチがいつ動き出すか分からない今、ぼんやりしている時間はない。すぐに得物を握り直す。

    「援護はするよ」
    「ハッ!そのボロボロの体でか?邪魔なだけだ、引っ込んでろ」
    「……頼んだよ。パイモンは俺の後ろにいて」
    「お前が嫌って言ってもここにいるから安心しろ!」

    アハウと話したことで少し安心したのだろう、パイモンが調子を取り戻して来たようで良かった。
    巻き込まれない程度に下がった俺たちを見て、巨大な龍の影となったアハウは高らかに笑い、宣言する。

    「お前の主人であるこのクフル・アハウ様が、憐れな従者のために、限定的に、条件付きで、節度を持って契約に従い、部分的、一時的に力を解放し、お前を救ってやろう!」

    次の瞬間、ガギンッと鈍い音が響き渡る。矮小な人間など簡単に引き裂ける龍の爪と、どんなに巨大な敵も打ち砕く重い刃がぶつかり合った。アハウが腕を振るいキィニチを弾くが、ひらりと宙返りし鉤縄で高みへ飛ぶ。アハウが応じるように高く飛び立ち、苛烈な空中戦が始まった。鉤縄を使い空を我が物とするように駆け回る小さき者に、巨大な龍はその体躯に見合う鉤爪で攻撃し、草元素の炎を吐く。その龍の懐に入り込むように隙を見て突き立てられた刃は、ドットの鱗に阻まれ弾かれた。

    「ギャハハッ!やるじゃねえか!」

    アハウはそう言うと攻撃速度を少し上げる。凄まじい攻防の中で、アハウがキィニチの左腕に噛み付いた。突き立てられた牙は柔い肌に深く突き刺さる。キィニチは抵抗するもその牙が離れる気配がないと分かると、アハウの目をめがけて得物を突き立てようとした。しかしそれを許すアハウではなく、その剣は鉤爪に弾かれる。
    抵抗は無駄だと悟ったのか、キィニチは自分の腕に向かって、剣を振り下ろした。

    「おまっ!?オレの器に何してくれてんだ!」

    間一髪、腕に刃が掠ったあたりでアハウが慌てて口を離し、剣を弾く。その隙すら見逃さないキィニチはすぐに攻勢に出た。(もうちょっと攻防)

    「キィニチぃ…お前のことを傷付けるのは、契約者としても、――としても本望じゃないんだぜ?」

    低い声で唸るように呼びかける。それはどこか、祈りのようにも聞こえた。(聞き取れない空の描写)

    「何のためにお前が誰のものなのか、魂まで刻み付けてやったと思ってんだ。」

    言葉を紡ぐその間にも、アハウの攻撃の手は一切緩まない。キィニチは変わらずそれらを全ていなし、さらに攻撃を仕掛けようとする。

    「だからよォ」

    ――目を覚ませ

    一瞬、ほんの一瞬だけ、キィニチの動きが止まる。しかしその一瞬の隙を見逃さないアハウは、素早く尻尾を振り下ろす。もろに受けた衝撃のままにキィニチは地面に叩き付けられるが、受け身を取ったようですぐに立ち上がった。その時。キィニチの唇が僅かに震え、何か言葉が紡がれた、ように見えた。しかし、確かめる間もなく彼はまた飛び上がってしまった。
    また地面から離れたところで攻防が始まる。その攻防を見ていると、すぐに気が付く。キィニチの動きが、先程より格段に良くなったのだ。先程まで、獣のような獰猛な殺意が溢れていたのに対し、今は鋭い刃のような殺意が真っ直ぐにアハウに向いている。俊敏だが力任せだった獣のような動きも、複雑に相手を翻弄するようなものになる。

    「キィニチ、笑ってる…?」
    「え?そうなのか?オイラには何が起こってるのかさっぱり分からないぞ…」

    アハウはキィニチの変化に気が付いているのかいないのか、どこか楽しむように戦闘を続ける。その爪をさらに鋭利な物に変形させ、草元素を纏うことで更に凶悪な攻撃を放つ。その間もずっと声高々に笑っており、きちんと殺さない程度の加減をしているのかどうかさえ怪しい。
    一方キィニチは、アハウが吐いた炎すら利用し姿を眩ませたと思えば死角から斬り掛かり、剣を掴まれ封じられたとなれば足技を使う。こちらもこちらで遠慮など微塵もしていないようだ。いや、最初からそうだったのだが、フェイントなどタチの悪い手も使うようになり、ますます手に負えなくなっている。

    キィニチの草元素と…どこか見覚えのある力を纏った鋭い一太刀がドットの鱗を削り、アハウの熱い炎を纏った鉤爪が薄い皮を突き破り肉を焼く。

    アハウの笑い声と激しい戦闘音に紛れ、キィニチが何かを言っている。

    往日の灯火は燃え盛り

    それを聞き取ることは叶わなかったけれど、彼が何かを言うたびに草元素ではない"何か"の力が増している。

    方今の烈炎に至れり

    彼の纏うその力を、俺は見たことがあるはずだ。どこでだったか。少なくとも今のような使い方はしていなかったように思う。

    すべては振り返らぬ命の為

    その口上が終わると同時に、キィニチの纏う力が一層強くなる。大きく振りかぶったその攻撃に、アハウも炎をより大きくし応える。両者がぶつかり合うその瞬間、凄まじい轟音と共に目を開けていられないほどの光が溢れた。
    思わず閉じた瞼を開いてまず目にしたのは、キィニチがまたしても地面に叩きつけられる瞬間だった。少し間を置き起き上がった彼は、剣を杖代わりに起き上がろうとするも、あえなく倒れる。

    「なんだ?もうオレにその体を譲る気になったのか?」
    「ハッ…今、俺が死んでも、契約は無効だ…」
    「「キィニチ!」」

    明確な意思を以て言葉を発したキィニチに、パイモンと共に慌てて駆け寄る。その瞳には既に太陽のような輝きが戻っていた。
    しかし、その瞳はこちらを認めるより先に閉じられてしまった。

    「お、おい!大丈夫かキィニチ!」
    「パイモン、落ち着いて。気を失ってるだけだよ。」

    脈はあるし、呼吸もしている。しかしその呼吸はゼイゼイと荒く苦しそうなものだ。ひとまず顔は横に、体は仰向けにして寝転がせ、僅かながら侵食していたアビスを浄化していく。同時にパイモンが取り出した応急キットで処置を施した。あちらこちらに火傷を負っているし、引っかき傷からは出血がひどい。確かに死んではいないが、流石にやり過ぎだ。
    頭部を止血しようとバンダナを外した時、今付けられたものではない古い傷跡を見つけた。それを見て、先ほどの光景を思い出す。酒に酔った父親に酒瓶の破片で傷付けられていたのと、全く同じ位置だ。思わず手が止まってしまう。しかし、パイモンに見つかる前に真新しい傷と共に包帯で覆い隠した。
    2人で大きな傷への処置を完了させる頃には、呼吸は安定したようだった。マシになった顔色を見て安心すると同時に、どっと疲れが襲って来た。思わずその場に座り込んでしまう。

    「お、へばりついてたアビスどもは剥がれたのか?」

    そう言って後ろから顔を覗かせたアハウは、ぴょこぴょことキィニチに近寄ったかと思うと、徐ろに方口に噛み付いた。

    「ちょちょちょアハウ!?」
    「何やってるんだ!?」
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