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    fujinofbnss

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    男性P×麗さん バレンタインの話。ちょっとイベントのネタバレありますのでご注意。

    #P麗

    「貴殿、立ち聞きなんて趣味が悪いぞ」
     焦ったように、麗が非難する。みるみるうちに赤く染まる頬に少しほっとしながら、ごめんごめんと謝る。しかし、ここで狼狽えるような麗ではないのだ。手伝ってほしいと俺の目をじっと見てくる。こういったイベントは苦手そうにしていたのに、随分と肝が据わったように思う。
    「いいよ。練習しよう」
     麗のシチュエーションは気心の知れた隣人だ。企画書をもらって、Altessimoとともに俺も首を傾げた。隣人という距離感が、甘い関係になるというのは、想像が少し難しい。そういえば、そういうドラマも昔はあったような気がする。しかし、子供の頃に眺めたそれをはっきりと思い出すことはできない。
    「気心の知れた間柄だから、きっと、よく話をしたりしているんだろうな」
    「そうだね。ゴミ出しした時とかにばったりあって、立ち話に花が咲いちゃうとか」
    「貴殿、それでは井戸端会議みたいではないか?」
    「あ、そっか。うーん……そしたら、作りすぎた料理を分け合うとか?」
    「確かにそれは距離が近く感じるな」
    「あ、お隣さんといえばやっぱり幼馴染みたいな関係じゃないかな? 一緒に登校したり。そうそう、熱を出して学校を休んだ時に、看病に来てくれるとか。夏は一緒にベランダに出て花火を見るとか、糸電話とか憧れたなあ」
    「ふふ、貴殿の隣人は大変そうだ」
    「お隣さんの顔、思い出せないけれどね」
     そう言いながらも、麗は台本に俺の言葉を書き込んでいく。
    「設定はベースのものさえ逸脱しなければ色々加えて良いみたいだけれど……ヴァイオリンも、一緒に習っていたとか?」
    「どうなのだろうな? 貴殿はどう思う?」
     ぺたん、と麗の太ももに台本が置かれる。麗の指がピアノを弾くみたいに動く。
    「俺は、やっぱり麗のヴァイオリンには癒しの力があると思うな。麗が誰かを元気付けたいって思いで音楽を続けているんだなあってすごくわかるし、聞くと頑張ろうって思えるし」
    「……貴殿にそういわれると、すごく恥ずかしいな」
    「なんでよ、誇り持ってよ」
    「誇りは持っている。でも、貴殿から改めてそういわれると、すごく、嬉しい」
     最後の方は小さな声になって、俯いてしまう。さらっと流れた髪から覗く、うなじが柔らかい温度に色づいている。すうっと通る背骨に触れるみたいに、背中に手のひらを当てるとびくりと麗の身体が跳ねた。
    「そんなふうに照れられちゃうと、抱きしめたくなる」
    「……構わない」
     麗の腕が俺に向けられて上がる。一瞬、照れて涙が出そうになっている麗の顔が見えたけれど、そのまま腕の中に閉じ込めた。麗の体温を感じて不甲斐なく、心臓の音がうるさくなる。筒抜けだなあ、と思いながら、滑るような麗の髪に頬を寄せた。

    「貴殿のおかげでうまくいった」
     衣装に身を包んだまま、麗は俺の元に駆け寄ってくる。本当、画面の向こうの相手を羨んでしまうくらいには、上出来だった。
    「練習を頑張った麗の実力だよ」
    「……貴殿」
     きゅ、とスーツの裾を掴まれて、足を止める。麗が俯いて、立っていた。何か嫌なことがあっただろうか、と心配になる。
    「貴殿のことばかり考えていた。貴殿が隣人だったら、って」
     一字一句、麗の言葉を飲み込んで、理解する。つまり、それは。
    「でも、隣人なんかじゃなく、貴殿にはいつも隣に立っていてほしいと思ってしまった。欲張りだな、わたしは」
    「もっと欲張ろう、一緒に住もう」
    「ふふ、飛躍しすぎだよ」
     来年のバレンタインには、合鍵をチョコと一緒に渡そうと俺は忘れないように手帳にメモをした。
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    fujinofbnss

    DOODLE男性P×麗さん バレンタインの話。ちょっとイベントのネタバレありますのでご注意。「貴殿、立ち聞きなんて趣味が悪いぞ」
     焦ったように、麗が非難する。みるみるうちに赤く染まる頬に少しほっとしながら、ごめんごめんと謝る。しかし、ここで狼狽えるような麗ではないのだ。手伝ってほしいと俺の目をじっと見てくる。こういったイベントは苦手そうにしていたのに、随分と肝が据わったように思う。
    「いいよ。練習しよう」
     麗のシチュエーションは気心の知れた隣人だ。企画書をもらって、Altessimoとともに俺も首を傾げた。隣人という距離感が、甘い関係になるというのは、想像が少し難しい。そういえば、そういうドラマも昔はあったような気がする。しかし、子供の頃に眺めたそれをはっきりと思い出すことはできない。
    「気心の知れた間柄だから、きっと、よく話をしたりしているんだろうな」
    「そうだね。ゴミ出しした時とかにばったりあって、立ち話に花が咲いちゃうとか」
    「貴殿、それでは井戸端会議みたいではないか?」
    「あ、そっか。うーん……そしたら、作りすぎた料理を分け合うとか?」
    「確かにそれは距離が近く感じるな」
    「あ、お隣さんといえばやっぱり幼馴染みたいな関係じゃないかな? 一緒に登校したり。そうそう、 1485

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     焦ったように、麗が非難する。みるみるうちに赤く染まる頬に少しほっとしながら、ごめんごめんと謝る。しかし、ここで狼狽えるような麗ではないのだ。手伝ってほしいと俺の目をじっと見てくる。こういったイベントは苦手そうにしていたのに、随分と肝が据わったように思う。
    「いいよ。練習しよう」
     麗のシチュエーションは気心の知れた隣人だ。企画書をもらって、Altessimoとともに俺も首を傾げた。隣人という距離感が、甘い関係になるというのは、想像が少し難しい。そういえば、そういうドラマも昔はあったような気がする。しかし、子供の頃に眺めたそれをはっきりと思い出すことはできない。
    「気心の知れた間柄だから、きっと、よく話をしたりしているんだろうな」
    「そうだね。ゴミ出しした時とかにばったりあって、立ち話に花が咲いちゃうとか」
    「貴殿、それでは井戸端会議みたいではないか?」
    「あ、そっか。うーん……そしたら、作りすぎた料理を分け合うとか?」
    「確かにそれは距離が近く感じるな」
    「あ、お隣さんといえばやっぱり幼馴染みたいな関係じゃないかな? 一緒に登校したり。そうそう、 1485