あいをうて外界を拒絶するような重厚な扉は、長い年月を経てすっかり建て付けが悪くなり、案外間抜けな音をたててひらく。勝己は躊躇いなく屋敷に入ると、迷いなくこの屋敷の主人の部屋に飛び込んだ。
「きたぞ!とっととおきやがれぽややろう!」
ベッドの上でこんもりと丸くなった白い物体に飛び乗ると、中からぐぇ、と、くぐもった声がした。
「・・・・・・う、」
「おきろ!」
恐らく腰の当たりであろう丸まったそこに跨りながら、勝己はがばりとシーツを半分はいでやる。ぱらぱらと散らばる赤い髪の下で、形の良い眉がぎゅうと真ん中によって、まつ毛がふるりと震える。けれどその瞼は開くことなく、あろうことかさらに身体を丸めた。
「おい、今日はおれとてあわせする約束だろうが!」
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