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    可愛い可愛い私の「うーん」
    「……人の顔をじっと見て、どうかしたのか」
    「いや? 丹恒って可愛いなぁって思ってただけ」
    「……」

    私の言葉に興味をなくしたのか、読みかけの本に視線を戻す丹恒。
    彼に出会ってから――というか私が私だと認識してからの日々は丹恒となの……星穹列車のみんなで溢れている。
    なのは最初から親しみやすかったのもあり、同性ということもあってか、すぐに打ち解けられた。
    丹恒は……といえば、最初はお堅く、他人に興味なんてないのかと思いきや、そんなことは全くなく、私やなのの世話を焼いてくれるお兄ちゃん的存在へと変わっていった。
    そう、多分……お兄ちゃん的存在だった。もしくは弟。
    なのに、いつの間にか私は丹恒のことを好きになっていたし、丹恒も私を好きになっていた。いわゆる両想いというやつだ。
    今も楽しく丹恒の部屋で二人でまったりしているというのに、丹恒は本を読むのを止めようとしない。

    「ねえ、丹恒」
    「なんだ」
    「ちゅーしたくない?」
    「……」
    「あ、したいって顔してる」

    仕方ないなぁと笑って丹恒の膝の上に座り、彼の頬を両手で挟む。

    「したいと思ってるのはお前じゃないのか?」
    「それはもちろん」

    でも、私に頬を挟まれた丹恒の顔には『キスしたい』と書いてあるのだ。
    だったら応えるべきだろう、恋人としては。
    唇を寄せると、触れる間際に丹恒が目を閉じる。
    キスをするときに目を閉じるのがマナーだと私に教えたのは丹恒だ。

    「ねえ、丹恒」

    丹恒の上着に手をかけると、彼は大人しく――いや、脱がせやすいように協力してくれる。
    彼の上着がすとん、と床に落ちる。丹恒はそれを拾おうとはせずに今度は私の上着を脱がせようとする。

    「丹恒のえっち」
    「先に仕掛けたのは星だろう」
    「そうだっけ? まあ、いいよ。どっちでも」
    「そういえばさっき俺の顔を見て、可愛いと言っていたな」
    「え、うん」
    「どっちが可愛いか、きちんと教えてやる必要があるようだな」
    「え」

    私の上着もすとん、と床に落ちる。
    丹恒は私を抱きかかえると、奪うみたいに唇を重ねてくる。
    真面目な顔をして本を読みながらも私の気配に敏感な丹恒は可愛い。
    私のことが大好きで仕方ないという顔をしている時の丹恒は可愛い。
    私からキスをされて照れる時の丹恒は可愛い。
    だけど、自分からキスを仕掛けてくる時の丹恒は……悔しいほどにかっこよくて。

    「~~、たんこーずるい」
    「どっちが可愛いか分かったか?」
    「それは丹恒だと思うけど」
    「そうか、まだ分かってないなら仕方ないな」

    私はコアラのように丹恒の体にしがみついたまま、彼によってベッドまで運ばれる。
    やっぱり丹恒ってえっちじゃん。
    そう思うけど、私も多分丹恒と同じくらいえっちだと思うので、それは引き分けにしておこう。
    私をベッドに優しく下ろして、ほんの少し嬉しさを滲ませながらキスをしてくる丹恒はやっぱり可愛くて。
    それだけは譲れないと思いながら、熱いキスを受け入れるのだった。
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