気紛れの花冠日も時間も関係ない場所。
太陽から隠れた、それでいて不思議と暖かい、誰もいない——別の部屋には居るのだろうが——静かな縁側。
其処に彼は居た。
特に隠し事があるわけでもないし、そういった事をするような柄でもない。
そもそも疚しさを感じるような存在ではないのだが——腰掛けた彼はひとり、楽しげもなく、ただ無表情のままに、手を動かしていた。
ふと、何者かの気配を感じた彼は、視線を其方へと向けることなく口を開いた。
「乾の。……御前か」
そう声を掛けられれば、其れは当たり、とでも言うように、姿を現した。
乾と呼ばれた男は微笑み、此方を見ぬ神儀に臆することなく歩みを進める。
「お隣、頂いても?」
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