花火は好きじゃなかったが、 花火は好きじゃねぇ。
そう心のなかで呟いて、俺ははしゃいでいる旦那から視線を離した。
シミュレーターで再現した夏の夜は生暖かい風が時折吹くぐらいで過ごしやすい。
この島はカルデアの関係者しかおらず、みんな遠慮なく騒いでいて鼓膜が休む暇もないくらいだ。
浜辺で小さな花火を散らしているマスター達。離れたところで花火を打ち上げているサーヴァント達。バーベキューをする者、酒をあおる者、誰もが笑い色鮮やかな火花を楽しんでいる。
ドーン、ドーンと打ち上がる音が重なり。パチパチと火の粉が降る音が散らばる。
夜空には彩り豊かな花が咲き、時折妙な形の花火が上がるとどっと笑い声があがる。
どれもが輝いて、あっという間に去ってしまう。生前別れた愛しい人々のように。
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